ニワトリ
ニワトリ(鶏、庭鳥、学名:Gallus gallus domesticus)は、キジ科に属する鳥類の1種で、代表的な家禽として世界中で飼育されている。
ニワトリを飼育することを養鶏と呼ぶ。
起源[編集]
祖先種のヤケイとしては単元説と多元説がある。単元説は、東南アジアの密林や竹林に生息しているセキショクヤケイ(Gallus gallus)を祖先とする説である。多元説(交雑説)はセキショクヤケイ、ハイイロヤケイ(G. sonneratii)、セイロンヤケイ(G. lafayetii)、アオエリヤケイ(G. varius)のいずれか複数の種が交雑してニワトリとなったとする説である。現在では分子系統学的解析によってセキショクヤケイもしくはその亜種に由来する可能性が強く示唆されている。一方で、現在のニワトリからハイイロヤケイ由来の遺伝子が見出されるなど、多元説を支持する報告もある。
名称[編集]
ニワトリという和名は「庭に飼う鳥」、つまり家禽という意味から名づけられた。ニワトリは普通「鶏」と書かれるが、「家鶏」で「にわとり」と充てることもある。ニワトリは古くはカケ(鶏)と呼ばれた。代表的な鳥であるため、単に「とり」ともよばれる。雄のニワトリは「雄鶏(牡鶏)」(おんどり)、雌のニワトリは「雌鶏(牝鶏)」(めんどり)と呼ばれる。
漢字[編集]
「鶏(鷄、雞)」という漢字は、甲骨文字に見られるニワトリを象った象形文字に由来する。これに音を表す「奚」を加えた後、ニワトリを象っていた部分が通常の「鳥」(または「隹」)と同じように書かれるようになり、「鶏」の字体となった。なお、かつて「会意形声文字」と解釈する説があったが、根拠のない憶測に基づく誤った分析である。
「鶏」は万葉仮名の「け」(甲類)にも使われる。漢字「鶏」は様々な複合語を作り、「軍鶏」(しゃも)、「闘鶏」(しゃも)、「鶤鶏」(とうまる)、「矮鶏」(ちゃぼ)、「小鶏」(ちゃぼ)、「水鶏/秧鶏」(くいな)、「黄鶏」(かしわ)、「花鶏」(あとり)、「珠鶏」(ほろほろちょう)、「吐綬鶏/白露鶏」(しちめんちょう)、「食火鶏」(ひくいどり)などと読む。
ちなみに、「酉」という漢字は酒壺をかたどった象形文字で、仮借して十二支の10番目を指す単語を表記する。のち十二支それぞれに動物が割り当てられた際、「酉」にはニワトリがあてられた。
英語[編集]
英語では"Chicken"。話者の地域、ニワトリの年齢や雌雄などによって様々に言い分けが存在し、"Chicken"も元々は「若いニワトリ」を指す用語であった。この用法としての"Chicken"は、イギリスのパブや劇場の名、またはHen and Chicken Islandsなどの"Hen and Chickens"というフレーズで残っている。本種全体を指す用語としてはdomestic fowl、barnyard fowlもしくは単にfowlが使われており、現在でも本種全体を指す語として使われる場合が有るが、「家禽」(主にキジ目の、あるいはカモ目も含んだ人に飼われる鳥)全体を指す広い言葉でもある。さらに遡るとfowlは元々、全ての鳥を指していたが、この用法は今では"wild fowl"という複合語のみで用いる。英語fowlは中英語のfowl, fowel, fugol、アングロサクソン語のfugel, fugol、オランダ語のvogel、そしてアイスランド語のfugl, foglと同根である。
イギリスとアイルランドでは1歳以上の雄鶏をcockと呼ぶのに対し、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリアやニュージーランドでは普通同じものを指してroosterと呼ばれる。アメリカ英語でroosterが用いられるのは、cockは陰茎という意味があり、この連想を避けるためである。またcockは通例"cock cardinal"や"cock robin"のように複合語で、鳥の雄を表すこともある。1歳未満の雄はcockerelと呼ばれる。去勢された雄鶏はcaponと呼ばれる。
1歳以上の雌鶏はhen、それより若い雌鶏はpulletと呼ばれる。ただし採卵養鶏場では、卵を産むようになった16-20週目の雌鶏はpulletではなくhenと呼ばれるようになる。オーストラリアとニュージーランドでは、全ての年齢・性別のニワトリを表すchook [tʃʊk]という総称が用いられる。また、雛はchickと呼ばれる。"Rooster"が雄鶏、"hen"が雌鶏を指す言葉として広く使われているのにも拘らず、"chicken"という用語はときおり誤って雌鶏のみを指して使われる。
アメリカ合衆国のディープサウスでは、ニワトリはyardbirdというスラングで呼ばれることもある。