ニューヨーク・ヤンキース
ニューヨーク・ヤンキース(英語: New York Yankees、英語での発音は「ヤンキーズ」と濁る、略称: NYY、ヤ軍)は、メジャーリーグベースボール(以下MLB)アメリカンリーグ東地区所属のプロ野球球団。本拠地はニューヨーク州ニューヨーク・ブロンクスにあるヤンキー・スタジアム。
概要[編集]
メジャーリーグ屈指の名門球団として知られており、アメリカン・リーグ優勝40回、1969年以降の地区優勝20回、ワールドシリーズ出場40回、優勝27回という数字はいずれも歴代最多である。この数字は、ワールドシリーズ出場数の次点がサンフランシスコ・ジャイアンツの20回、優勝数の次点がセントルイス・カージナルスの11回である事と比較して、他球団を大きく引き離している。永久欠番の数も24とMLB最多。
1901年のアメリカン・リーグ創設時にボルチモア・オリオールズとしてスタートし、監督はジョン・マグローであった。しかしアメリカン・リーグのジョンソン会長とマグロー監督の対立から、マグローはナショナル・リーグのニューヨーク・ジャイアンツに移り、ナショナル・リーグとの摩擦を生んだが、やがてニューヨークへの移転を画し、1903年にニューヨーク・ハイランダースとして移った。やがて1913年に本拠地球場の移転からニューヨーク・ヤンキースと改称し、1920年にベーブ・ルースをレッドソックスから獲得してから、強豪球団として球界の盟主として君臨し、ベーブ・ルース、ルー・ゲーリッグ、ジョー・ディマジオ、ミッキー・マントルなどのスター・プレーヤーを輩出して、その後も1970年代のレジー・ジャクソン、1990年代のデレク・ジーター、2000年代のアレックス・ロドリゲスなど常に注目を浴びるチームである。
球団の歴史[編集]
球団発足(オリオールズ)[編集]
1900年1月に、それまでマイナーリーグであったウエスタンリーグを改組してアメリカンリーグと改称され、8球団でスタートした。これは、それまで12球団であったナショナル・リーグがこの年に8球団に再編成されたのに伴い、アメリカン・リーグ会長のバン・ジョンソンを中心として同リーグを新たに球団を増やして8球団制にしたものであった。この時にまだマイナー・リーグとしてナショナル・リーグの傘下に入ることであったので、フランチャイズにシカゴにも進出することもナショナル・リーグの承諾を得た。1900年のシーズン終了後にニューヨークで開かれたナショナル・リーグの会議で、ジョンソン会長は新たにワシントンとボルチモアにもフランチャイズを設けることの許可を求めた。バン・ジョンソンは始めから、アメリカン・リーグをナショナル・リーグに対抗するメジャーリーグにする意図であった。そのためには東部の大都市にもフランチャイズを置くことがどうしても必要であった。ナショナル・リーグは当然のごとく拒否したため、1901年の年が明けてからアメリカン・リーグをメジャーリーグとする旨の宣言がなされた。この時にアメリカン・リーグには、前年の8チームの内、カンザス・シティ、ミネアポリス、インディアナポリス、バファローを除名して、新たに東部のワシントン、ボルチモア、フィラデルフィア、ボストンを加えてこの年に8チームでスタートした。この時にジョンソン会長はニューヨークにもフランチャイズを置くことを企図したが、ナショナル・リーグの猛反発と、ナショナルリーグのニューヨーク・ジャイアンツのオーナーがタマニー・ホール(注:民主党の派閥組織)を動かしながら、政治的妨害に出る行動をとったため、代替案として新加入する地区の一つは前年にナショナル・リーグのチームを失っていたメリーランド州ボルチモアとした。この時に創設されたボルチモア・オリオールズ(現在のオリオールズとは無関係)が後のニューヨーク・ヤンキースの起源となった。
1901年にボルチモア・オリオールズとして活動を始めたチームの最初の監督はジョン・マグローであった。ジョン・マグローはもともとバン・ジョンソンから新チームのオーナー兼監督兼三塁手として説得されてセントルイス・カージナルスから参加した人物であった。しかしこの2人は最初からうまくいかなかった。
ジョン・マグローは勝負に厳しくまた相手選手の走塁妨害などラフプレーを厭わない監督で、対してアメリカン・リーグ会長のバン・ジョンソンはナショナル・リーグのような規則の無いところでの荒っぽいプレーや喧嘩や騒動の絶えない野球ではなく、厳格なルールの適用と審判の権威の強化を目指していた。やがて決定的な対立が生じた。それはボルチモアからニューヨークへの本拠地移転であった。ジョンソン会長はニューヨークへの進出を諦めなかった。これに反抗したマグローは1902年のシーズン半ばにナショナル・リーグに鞍替えし、ニューヨーク・ジャイアンツの監督となった。その1週間後に、ジャイアンツのオーナーはオリオールズの支配権を取得し、オリオールズ選手の大量引抜きを行ったが、この強引な行動に対しアメリカン・リーグ側は即座にオリオールズの支配権を取り戻し、ニューヨークへのチーム移転を行った。
ア・リーグとナ・リーグ間の闘争に巻き込まれた形となったオリオールズの本拠地移転であったが、1903年に両リーグで「平和会議」を開催し、両リーグ間であった選手との契約を巡る紛争を調停し将来の協調を約束すると同時に、ナショナル・リーグは、リーグの中心的な球団にならないとの条件付きで、アメリカン・リーグがニューヨークにフランチャイズを置くことにも同意した。これにより、ジョンソン会長とアメリカン・リーグは念願のニューヨーク進出を果たす。この時に、相次ぐ主力選手の引き抜きで崩壊寸前であったオリオールズを当時1万8千ドルでフランク・J・ファレル(英語版)とウィリアム・スティーブン・デブリーが共同出資で買い取り、球団をニューヨークへ移した。新しいオーナーの最初の仕事は、ジャイアンツの妨害のない地域に球場設置場所を置く事であった。この両人は市政やギャンブル業界に強いコネを持っており、ファレルは競馬やカジノや複数の賭博場で財を成した人物であり、一方、デブリーはニューヨーク市警本部長であったが、1902年初頭に汚職が発覚して追放されたばかりで数々の違法ビジネスに手を染めていた。
エピソード[編集]
- 2022年に世界有数の経済誌『フォーブス』が公表したスポーツチームの資産価値では、ヤンキースはMLB首位の60億ドルと算出されており、世界のスポーツチームと比較してもダラス・カウボーイズ、ニューイングランド・ペイトリオッツ、ロサンゼルス・ラムズに次ぐ4位である。
- 規律が厳しい事でも知られている。長髪、無精ひげは厳禁である(整えられた口ひげは認められている。例:ランディ・ジョンソン、デビッド・ウェルズなど)。そのため、マニー・ラミレス(ロサンゼルス・ドジャース)が2005年シーズン中にトレードを志願した際にもヤンキースはその自由奔放で規律とは無縁のキャラクターを考慮し獲得に動かなかった。ジェイソン・ジアンビ、ジョニー・デイモン、ブライアン・マッキャン、ルーグネッド・オドーアらも、ヤンキース入りに際しては、トレードマークだった長髪を短く整え、髭を剃った。
- ベーブ・ルースから始まり、最近ではロジャー・クレメンスやジョニー・デイモンに至るまでボストン・レッドソックスとは選手を絡んだ因縁も深くライバル関係にあり、特に両チームのファン同士は犬猿の仲で知られる。
- ヤンキー・スタジアムでの試合終了後はフランク・シナトラの「ニューヨーク・ニューヨーク」がスタジアムに放送されるのが恒例である。球団歌は "Here Come the Yankees" (1967年)、作曲はボブ・バンディン及びルー・ストールマン。ただし球場で一番良くかかっている曲は前述の「ニューヨーク・ニューヨーク」である。
- 「選手の名前が球団名を超えることはない」という理念から、球団創設以来一貫してホーム・ビジター両方のユニフォームで、背番号の上に選手名を付けたことがない(現在はボストン・レッドソックス等の一部の球団では、ホーム用のユニフォームにおいては背番号の上に選手名を付けないチームもあるが、ビジター用ユニフォームでは選手名を背番号の上に付けているチームが殆どである。ただし、ヤンキースでもファン向けのオフィシャルグッズとして発売しているレプリカユニフォームやTシャツ等には背番号の上に選手名が記載されている物が発売されている)。また、ユニフォームの正面の番号(いわゆる『胸番号』と呼ばれるもの)も、球団創設以来ユニフォームに付けたことはない。
- 2023年4月19日、日本で転職サイト「ビズリーチ」運営会社の経営や同国のプロ野球球団「東北楽天ゴールデンイーグルス」の創設に携わった南壮一郎を本球団の経営パートナーとして迎え入れたことを発表した。日本人が本球団の経営パートナーになるのは初めてだとしている。
チーム名の由来[編集]
Yankeeとは米国人の俗称で、特にニューイングランド周辺の米国人が好んで使う。そして Yankeesは、オランダ語で「あいつら」を意味するJan Keesが語源だといわれている。この言葉はニューヨークを開拓したオランダ人が英国人に対して指していた一種の蔑称であったが、今日に至ってはそのニュアンスはない。米国では「ヤンキーズ」とsは濁って発音されるが、日本では報道機関等を含めて「ヤンキース」と誤った発音が定着している。
ロゴ・マークの由来[編集]
ヤンキースのロゴは、19世紀後半に作られたニューヨーク市警察(NYPD)の名誉勲章にあしらわれている"NY"の意匠が元になっている。これをデザインしたのは、アクセサリー等で有名なティファニー&カンパニーである。