トミー・リー・ジョーンズ
トミー・リー・ジョーンズ(Tommy Lee Jones, 1946年9月15日 - )は、アメリカ合衆国の俳優。1993年の『逃亡者』でアカデミー助演男優賞を受賞した。
経歴[編集]
テキサス州出身。父親は油田で働き、母親は警察官。
高校卒業後、家計を助けるために父親の働く油田会社に就職。傍ら寝る間も惜しんで独学で勉強し、1年後、奨学金でハーバード大学英米文学部に進学。この時点の夢は文学と演劇の教師になることで、大学では演劇部に所属していた。寮のルームメイトに後の副大統領となるアル・ゴアがおり、その後も親交が続いている。
文学と演劇を教える教師を目指していたが、次第に舞台に立つ事を夢見るようになる。大学卒業後、ブロードウェイに憧れてマンハッタンへと出る。そこでは小さな食堂で皿洗いの仕事をしながら、稽古に励んだ。そんなときに友人と受けた映画のオーディションに合格し、1970年『ある愛の詩』で映画デビューした。しかし、同映画の製作元パラマウント映画の上層部から「顔つきがキツい」とクレームがつき、映画自体は大ヒットしたものの苦い映画デビューとなった。
その後はしばらく役に恵まれず、下積みが長く続き、『ある愛の詩』の次の出演作は『ライフ・スタディ』という低予算作品だった。同作まで3年間、映画の仕事がなく、その間は最初の妻であるジャーナリスト、ケイト・ラードナー(リング・ラードナーの孫)に養ってもらっていた。
1980年代はテレビ出演が主で、映画は出演しても脇役だった。しかし『JFK』や『沈黙の戦艦』出演の頃から注目されるようになる。1993年の『逃亡者』ではハリソン・フォード演じるキンブル医師を追い詰める捜査官役でアカデミー助演男優賞を受賞した。以降、主演作品に恵まれるようになる。
1997年、『メン・イン・ブラック』のK役に抜擢される。監督によると「彼は大真面目に演じていてもどこかコミカルだ」ったのが決め手とのこと。このことについて本人は不本意だったというが、映画は続編が作られるほどのヒットを記録し、Kははまり役の一つとなった。また同役は映画の公開から数年を経て、缶コーヒーBOSSのCMにおいて本人出演でパロディ化された。その経緯は後述の通り。
1999年、京都の老舗で日本屈指の宿である俵屋旅館が火事になったとき、偶然宿泊していた。鎮火後、「火事が消えたのならあの部屋に戻りたい」と言い、周囲を困惑させたとする逸話がある。
2005年には自身が監督・プロデュース・出演した『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』でカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。
2006年4月からは日本国内においてサントリー缶コーヒーBOSSレインボーマウンテンのCM「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」に出演。毎回日本の様々な職業に潜入するというストーリーで、2023年1月現在、17年目を迎える長寿CMシリーズとして定着している。
2011年4月からはサントリーグループによる東北地方太平洋沖地震復興支援として、坂本九のヒット曲である「上を向いて歩こう」・「見上げてごらん夜の星を」の両曲を同社グループのCM出演者総勢71名がリレー方式で歌う企業イメージCMにも出演。歌声も披露している。
2012年8月からは、「BOSSコーヒー20周年」とソフトバンクモバイルの「プラチナバンド開始」の共同キャンペーンの一環として、「宇宙人ジョーンズ」と「白戸家」両シリーズのコラボレーションCMにも出演している。
人物[編集]
2012年、『メン・イン・ブラック3』のプロモーションワールドツアーで、唯一、日本だけに参加し、「私は本当に日本が大好きで、日本に来るのはいつも幸せ。本当に美しい国ですし、私にとっては第二の故郷。ファンがいるということはあまり意識していませんが、こうやってみなさんにお会いでき、本当に嬉しく思います」と、自らの日本好きを語っている。また2013年にも『終戦のエンペラー』のプロモーションで来日。歌舞伎座を訪問し、「10年来の歌舞伎のファンだ」と語った。娘の為に集めているという浮世絵も趣味としており、月岡芳年の月百姿を34作まで収集しているという。好物の日本料理は「鮎の塩焼き」。
主な出演作品[編集]
公開年 | 邦題
原題 |
役名 | 備考 | 吹き替え |
---|---|---|---|---|
1970 | ある愛の詩
Love Story |
ハンク | 不明(日本テレビ版)
小室正幸(テレビ東京版) 真木駿一(VOD版) | |
1975 | トミー・リー・ジョーンズのホロスコープ
Eliza's Horoscope |
トミー・リー | ||
1976 | チャーリーズ・エンジェル/ぶどう園乗っ取り殺人事件
Charlie's Angels |
Aram Kolegian | テレビ映画 | |
ジャクソン・ジェイル
Jackson Country Jail |
コーリー・ブレイク | 津嘉山正種(TBS版) | ||
激突39台!史上最大の自動車事故/ハイウェイ・パニック
Smash-Up On Interstate 5 |
Officer Hutton | テレビ映画 | ||
1977 | ハワード・ヒューズ物語
The Amazing Howard Hughes |
ハワード・ヒューズ | ||
ローリング・サンダー
Rolling Thunder |
ジョニー・ヴォーデン | 小杉十郎太(テレビ東京版) | ||
1978 | ベッツィー
The Betsy |
アンジェロ | ||
アイズ
Eyes of Laura Mars |
ジョン・ネヴィル | 神谷明 | ||
1980 | 歌え!ロレッタ愛のために
Coal Miner's Daughter |
ドゥーリトル・リン | ゴールデングローブ賞 主演男優賞 (ミュージカル・コメディ部門)ノミネート | 大塚明夫 |
1982 | 死刑執行人
The Executioner's Song |
ゲイリー | テレビ映画
プライムタイム・エミー賞 主演男優賞(ミニシリーズ・テレビ映画部門)受賞 |
|
1983 | キャプテン・ブーリーの大冒険
Nate and Hayes |
ブーリー・ヘイズ | 日本劇場未公開 | 戸谷公次 |
1985 | ニューヨーク・コマンドー/セントラルパーク市街戦
The Park is Mine |
ミッチ | ||
1986 | ブラックライダー
Black Moon Rising |
クイント | 田中信夫(テレビ朝日版) | |
1987 | 背徳の罠/死者のメッセージ
Broken Vows |
ペーター | 日本劇場未公開 | |
ビッグタウン
The Big Town |
ジョージ・コール | |||
1988 | ストーミー・マンディ
Stormy Monday |
コズモ | 銀河万丈(テレビ東京版) | |
1989 | ロンサム・ダブ
Lonesome Dove |
ウッドロウ | テレビ映画 | 中田浩二(NHK-BS2版) |
ザ・パッケージ/暴かれた陰謀
The Package |
トーマス | 笹岡繁蔵(TBS版) | ||
1990 | アパッチ
Fire Birds |
ブラッド・リトル | 小川真司(フジテレビ版)
小林清志(テレビ朝日版) | |
1991 | JFK
JFK |
クレイ・ショー | アカデミー助演男優賞ノミネート
英国アカデミー賞 助演男優賞ノミネート |
小川真司(ソフト版)
小林清志(テレビ朝日版) |
1992 | 沈黙の戦艦
Under Siege |
ウィリアム・ストラニクス | 菅生隆之(ソフト版)
池田勝(テレビ朝日版) | |
1993 | 心の扉
House of Cards |
ジェイク・ビアランダー | 菅生隆之 | |
逃亡者
The Fugitive |
サミュエル・ジェラード | アカデミー助演男優賞受賞
ゴールデングローブ賞 助演男優賞受賞 |
菅生隆之(ソフト版)
小林清志(テレビ朝日版) 田中信夫(機内上映版1) 麦人(機内上映版2) | |
天と地
Heaven & Earth |
スティーブ・バトラー | 菅生隆之 | ||
1994 | ワイルド・メン
The Good Old Boys |
ヒューイ・キャロウェイ | テレビ映画
製作・脚本兼任 |
|
ブローン・アウェイ/復讐の序曲
Blown Away |
ギャリティ | 小林清志(ソフト版)
菅生隆之(テレビ朝日版) | ||
依頼人
The Client |
ロイ・フォルトリッグ | 有川博(ソフト版)
菅生隆之(テレビ朝日版) | ||
ナチュラル・ボーン・キラーズ
Natural Born Killers |
ドワイト・マクラスキー | 樋浦勉 | ||
ブルースカイ
Blue Sky |
ハンク・マーシャル | 菅生隆之 | ||
1995 | バットマン フォーエヴァー
Batman Forever |
ハーヴェイ・デント / トゥーフェイス | 菅生隆之(ソフト版)
小林清志(テレビ朝日版) | |
タイ・カップ
Cobb |
タイ・カッブ | |||
1997 | ボルケーノ
Volcano |
マイク・ローク | 菅生隆之(ソフト版)
小林清志(テレビ朝日版) | |
メン・イン・ブラック
Men in Black |
エージェントK | 坂口芳貞(ソフト版)
菅生隆之(日本テレビ版) | ||
1998 | 追跡者
U.S. Marshals |
サミュエル・ジェラード | 『逃亡者』のスピンオフ作品 | 菅生隆之(ソフト版、テレビ朝日版)
小林清志(テレビ東京版) |
スモール・ソルジャーズ
Small Soldiers |
チップ・ハザード | 声の出演 | 玄田哲章(VHS版、日本テレビ版)
銀河万丈(DVD版) | |
1999 | ダブル・ジョパディー
Double Jeopardy |
トラヴィス | 池田勝(ソフト版)
菅生隆之(テレビ朝日版) | |
2000 | 英雄の条件
Rules of Engagement |
ヘイズ・ホッジス | 堀勝之祐(ソフト版)
池田勝(フジテレビ版) | |
スペース カウボーイ
Space Cowboys |
ホーク・ホーキンズ | 坂口芳貞(ソフト版)
菅生隆之(日本テレビ版) | ||
2002 | メン・イン・ブラック2
Men in Black II |
エージェントK | 坂口芳貞(劇場公開版)
菅生隆之(テレビ朝日版) | |
2003 | ハンテッド
The Hunted |
L.T. | 池田勝(ソフト版)
小林清志(テレビ東京版) | |
ミッシング
The Missing |
サミュエル・ジョーンズ | 有川博 | ||
2005 | チアガール VS テキサスコップ
Man of the House |
ローランド・シャープ | 日本劇場未公開
製作総指揮兼任 |
坂口芳貞 |
メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬
The Three Burials of Melquiades Estrada |
ピート・パーキンズ | カンヌ国際映画祭 男優賞受賞
監督・製作兼任 |
菅生隆之(ソフト版) | |
2006 | 今宵、フィッツジェラルド劇場で
A Prairie Home Companion |
アックスマン | 小林清志 | |
2006- | 宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ | 宇宙人ジョーンズ | テレビCM | 谷口節(『ネット』篇まで)
菅生隆之(『大相撲』篇から) |
2007 | ノーカントリー
No Country for Old Men |
エド・トム・ベル | 英国アカデミー賞 助演男優賞ノミネート | 菅生隆之 |
告発のとき
In the Valley of Elah |
ハンク・ディアフィールド | アカデミー主演男優賞ノミネート | 谷口節 | |
2009 | エレクトリック・ミスト 霧の捜査線
In the Electric Mist |
デイヴ・ロビショー | 日本劇場未公開 | 加藤優季 |
2010 | カンパニー・メン
The Company Men |
ジーン・マクラリー | (吹き替え版なし) | |
2011 | The Sunset Limited | White | 監督兼任 | — |
キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー
Captain America: The First Avenger |
チェスター・フィリップス大佐 | 谷口節 | ||
2012 | メン・イン・ブラック3
Men in Black III |
エージェントK | ||
31年目の夫婦げんか
Hope Springs |
アーノルド・ソームズ | 菅生隆之 | ||
終戦のエンペラー
Emperor |
ダグラス・マッカーサー | (吹き替えなし) | ||
リンカーン
Lincoln |
タデウス・スティーブンス | アカデミー助演男優賞ノミネート
全米映画俳優組合賞助演男優賞受賞 |
菅生隆之 | |
2013 | マラヴィータ
The Family / Malavita |
ロバート・スタンスフィールドFBI捜査官 | 小林清志 | |
2014 | ミッション・ワイルド
The Homesman |
ジョージ・ブリッグス | 監督・脚本・製作総指揮兼任 | 小村哲生 |
2016 | クリミナル 2人の記憶を持つ男
Criminal |
フランクス医師 | 菅生隆之 | |
ジェイソン・ボーン
Jason Bourne |
ロバート・デューイ | 土師孝也(ソフト版)
大塚明夫(BSテレ東版) | ||
メカニック:ワールドミッション
Mechanic: Resurrection |
マックス・アダムス | 菅生隆之 | ||
2017 | 記者たち 衝撃と畏怖の真実
Shock and Awe |
ジョー・ギャロウェイ(英語版) | ||
ベスト・バディ
Just Getting Started |
レオ | |||
2019 | アド・アストラ
Ad Astra |
クリフォード・マクブライド | ||
2020 | 陰謀の街 ワンダー
Wander |
ジミー・クリート | 日本劇場未公開 | |
カムバック・トゥ・ハリウッド!!
The Comeback Trail |
デューク・モンタナ | |||
2023 | Finestkind | Ray Eldridge | — | |
眠りの地
The Burial |
ジェレミア・ジョセフ・オキーフ | 日本劇場未公開 | 菅生隆之 | |
TBA | The Razor's Edge | 撮影中 |
日本語吹き替え[編集]
主に担当しているのは、以下の三人である。
- 菅生隆之
- 『沈黙の戦艦』(ソフト版)で初担当。以降、ほとんどの作品で吹き替えを務めており、ジョーンズの専属(フィックス)として定着している。
- 菅生によるジョーンズの吹き替えは当初、映画のみの担当であったが、サントリー缶コーヒーBOSSレインボーマウンテンのCM「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」でジョーンズが演じる宇宙人ジョーンズの吹き替えを後述する前任者の谷口節の逝去に伴い、2013年4月放送の『大相撲篇』から引き継いで担当している。
- 小林清志
- 『JFK』(テレビ朝日版)で初担当。菅生に次いで多く担当。寺田貴信によるとジョーンズ来日のニュースが載ったスポーツ紙を持ち、逸話を語ると同時に「とても良い俳優さんだ」と話しており、大変気に入っていたという。2013年には「印象に残る俳優」を訊かれるとすぐに顔が浮かぶとしており、初担当した『JFK』を印象深い作品と述べたこともある。前述の菅生には冗談を交えつつ「気取った声を出してちゃダメだよ」等のアドバイスも送っていたといい、その後も小林自身はジョーンズの再演を希望していたが、2013年の『マラヴィータ』が最後の担当となった。
- 谷口節(トミー・リー・ジョーンズ本人公認)
- CM『宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ』にて2008年4月の初登場から『ネット篇』まで担当。谷口の起用はジョーンズから「僕の吹き替えはMr.谷口にしてくれ」と直々に指名されたことが理由だったとされている。生前は谷口自身も同業者に対し、「吹き替えしててこんなに嬉しいことはない」と語っていた。本CMをきっかけにジョーンズの声優の一人として定着したことで、2012年に死去するまでにいくつかの映画でも吹き替えを担当した。
このほかにも、池田勝、坂口芳貞、田中信夫、有川博、小川真司、銀河万丈、大塚明夫なども複数回、声を当てている。
主な受賞[編集]
- アカデミー賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- カンヌ国際映画祭
- 2005年度 男優賞 『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』
- ゴールデングローブ賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- ロサンゼルス映画批評家協会賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- シカゴ映画批評家協会賞
- 1993年度 助演男優賞 『逃亡者』
- MTVムービー・アワード
- 1994年度 コンビ賞 『逃亡者』(ハリソン・フォードと共に)