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ツキノワグマ

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ツキノワグマ(月輪熊、学名: Ursus thibetanus)は、哺乳綱食肉目クマ科クマ属に分類される食肉類。別名アジアクロクマヒマラヤグマ

日本の本州、四国にも生息するクマ(熊)である。

分布[編集]

アフガニスタン、イラン南東部、インド、カンボジア、タイ王国、大韓民国、中華人民共和国北東部から南部、台湾、朝鮮民主主義人民共和国、日本、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、ミャンマー、ラオス、ロシア東部。

形態[編集]

頭胴長(体長)120 - 180センチメートル。尾長6 - 10.5センチメートル。体重オス50 - 120キログラム、メス40 - 70キログラム。最大体重173キログラム。肩が隆起せず、背の方が高い。全身の毛衣は黒いが、赤褐色の個体もいる。胸部に三日月形やアルファベットのV字状の白い斑紋が入り、和名の由来になっている。旧属名Selenarctosは「月のクマ」の意で、これも前胸部の斑紋に由来する。一方でこの斑紋がない個体もいる。

眼や耳介は小型。乳頭の数は3対。

分類[編集]

以下の亜種の分類は、川口 (1991)・Wozencraft (2005) に従う。

Ursus thibetanus thibetanus G. Cuvier, 1823 チベットツキノワグマ
インド北東部のアッサムおよびそこに隣接するバングラデシュのシレット。中華人民共和国(雲南省南西部、四川省北西部、青海省南部、チベット自治区南東部)。
Ursus thibetanus formosanus Swinhoe, 1864 タイワンツキノワグマ
台湾
Ursus thibetanus gedrosianus Blanford, 1877 バロチスタンツキノワグマ
イラン、パキスタン
赤褐色の体毛で被われる個体が多い。
Ursus thibetanus japonicus Schlegel, 1857 ニホンツキノワグマ
日本(本州、四国)
Ursus thibetanus laniger (Pocock, 1932) ヒマラヤツキノワグマ(ヒマラヤグマ)
カシミール、パキスタン北部
Ursus thibetanus mupinensis (Heude, 1901) シセンツキノワグマ
中華人民共和国(青海省、甘粛省、陝西省からチベット自治区、広西チワン族自治区、広東省、浙江省にかけて)
Ursus thibetanus ussuricus (Heude, 1901) ウスリーツキノワグマ
中華人民共和国北東部、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国、ロシア南東部

カンボジアでは、野生下でマレーグマと交雑した例が報告されている。

生態[編集]

森林に生息する。夜行性で、昼間は樹洞や岩の割れ目、洞窟などで休むが、果実がある時期は昼間に活動することもある。夏季には標高3,600メートルの場所でも生活するが、冬季になると標高の低い場所へ移動する。シベリアの個体群は4 - 5か月にわたり冬眠するとされるが、パキスタン南部の個体群は冬眠しないとされる。

植物の果実・芽、小型の脊椎動物、昆虫、無脊椎動物、動物の死骸などを食べる。脊椎動物の食物としてカワガラスなどの鳥類、ネズミ科などの齧歯類、ニホンノウサギ、ニホンジカ、ニホンカモシカのほか、共食いとみられる例が報告されている。日本の長野県で1975 - 1977年に行われた135個の糞の内容物調査では、植物質と動物質を含む糞が47.4 %(64個)、植物質のみを含む糞が39.3 %(53個)、動物質のみを含む糞の割合が13.3 %(13個)であったという報告例がある。この調査では植物質を含んだ糞の71.8 %にミズナラ(含まれていた糞の数84個)、19.7 %にアケビ類(23個)、15.4 %にタラノキ(18個)、9.4 %にヤマブドウ(11個)、8.5 %にサルナシ(10個)の一部が含まれていたと報告されている。動物質を含んだ糞では57.3 %にアリ科(47個)、36.6 %にスズメバチ科・ミツバチ科(30個)、9.8 %にニホンノウサギ(8個)、4.9 %に甲虫類、3.7 %にニホンカモシカ(3個)の一部が含まれていたと報告されている。猛禽類(イヌワシ)の雛や大型草食獣(ニホンカモシカ)の幼獣などを捕獲して食べるなどする。

ドングリ(ブナ科堅果)などの採食のため樹上に登るが、枝先まで移動することができない。そのため枝を手元にたぐり寄せて採食するが、そのときに枝が折れて樹上に熊棚(クマ棚)と呼ばれる鳥の巣のような採食痕跡を残す。クマ棚は豊作年には少なく、凶作年には多くなる傾向がある。

繁殖様式は胎生。シベリアの個体群は6 - 7月、パキスタンの個体群は10月に交尾を行う。主に2頭の幼獣を産む。授乳期間は3か月半。幼獣は生後1週間で開眼し、生後2 - 3年は母親と生活する。生後3 - 4年で性成熟する。飼育下での寿命は約33年。1991年の時点での飼育下の長期生存例として広島市安佐動物公園で推定39年2か月(1948年3月捕獲 - 1987年4月)で死んだ個体(コロ)の例がある。京都市動物園で推定39年(1975年5月来園 - 2014年11月)で死んだ個体(サクラ)の例がある。

人間との関係[編集]

胆嚢は薬用とされる(熊胆)。薬効成分はUDCAとされ、化学合成が可能で代用品もあるが珍重されている。熊肉が食用にされることもある。日本(詳細は後述)とロシアでは法律によって狩猟(スポーツハンティング)が許可されているが、日本では地域・時季により制限がある(「#生息数」「#日本社会とツキノワグマ」で後述)。

農作物や養蜂、人間そのものに直接的な被害を与えることもある。インドのシッキム州では2008 - 2013年に少なくとも25人が本種に襲われたことで死亡している。

道路やダムの建設、農地開発、植林による生息地の破壊、毛皮や熊胆、熊の手目的の乱獲、駆除などにより生息数は減少している。幼獣をペット用に、牙や爪を取り除いたうえで犬と戦わせるなどの見世物とする目的での捕獲も懸念されている。アフガニスタンでは見られなくなり、バングラデシュや朝鮮半島では絶滅の危険性が高い。保護の対象とされることもあるが密猟されることもあり、中華人民共和国や朝鮮半島へ密輸されているとされる。国際的商取引は禁止されているが、例として1970 - 1993年に大韓民国へ2,867頭が輸入された記録がある。1977年に亜種バロチスタンツキノワグマが、1979年に種単位で絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(ワシントン条約)附属書Iに掲載されている。旧ソビエト連邦での1970年代における生息数は6,000 - 8,000頭、1985年における生息数は4,600 - 5,400頭と推定されている。中華人民共和国での1995年における生息数は、12,000 - 18,000頭と推定されている。

U. t. formosanus タイワンツキノワグマ
台湾原住民により狩猟の対象とされていた。ブヌン族では共通の祖先をもつという伝承から伝統的に狩猟は禁忌傾向とされるも、仕留めるのが難しいことから狩りに成功すれば英雄視された。原住民の間は本種は攻撃的、狩猟が難しい、希少なことから主流ではなく、主に有蹄類を狩猟する。一方でブヌン族への調査では有蹄類用のくくり罠やトラバサミで混獲されたり、偶然遭遇してしまい狩猟されたりすることもある。伝統的に漢民族では各部位が薬用になると信じられ特に胆嚢の価値が高いとされるが、原住民では文化や味・外部での市場価値が高いことから肉以外の部位は外部の市場に売り払い原住民の間では取引されることはなかった。1960年代以降は野生動物の肉を扱う飲食店が増えたことで、狩猟者が肉や部位全体を売るようになった。例として玉山国家立公園周辺では1980年代以前は販売目的の狩猟は22%だったが、1990年代では59%に増加した。
台湾では1989年に法的に保護の対象とされているが、密猟されることもある。
U. t. japonicus ニホンツキノワグマ
下北半島のツキノワグマ(下北半島個体群)
1998年における下北半島(青森県)の森林率は79 %で減少傾向にあり、一方で人工林率は43 %で増加傾向にある。2008年の時点での生息数は120 - 270頭と推定されている。
絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト)
紀伊半島のツキノワグマ(紀伊半島個体群)
紀伊半島は古くから林業地帯であり第二次世界大戦後の人工林増加もあり、人工林率は絶滅のおそれがある地域の中でも最も大きい。1994年に奈良県と三重県、和歌山県では狩猟による捕獲が禁止されている。1965年における生息数は335頭、1987年と1999年における生息数はそれぞれ180頭と推定されている。
絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト)
近畿北部地方のツキノワグマ(近畿北部地域個体群)
近畿地方北部に位置する京都府の推定生息数は、平成14年度(2002年度)の200-500頭から令和2年度(2020年度)の1640頭と回復傾向を見せた。このことから京都府はレッドデータブック(レッドノート)による指定を「絶滅寸前種」から「要注目種」に変更。平成14年度から禁止された狩猟を令和3年度(2021年度)から頭数限定で認めることとなった。
東中国地域のツキノワグマ(中国地方東部個体群)
人工林の増加、道路建設やスキー場建設、イノシシ用の罠による混獲などによる影響が懸念されている。
絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト)
西中国地域のツキノワグマ(中国地方西部個体群)
自然林の減少、住宅地や人工林の増加、スキー場開発や別荘地造成、イノシシ用の罠による混獲などによる影響が懸念されている。1994年に島根県と広島県・山口県では、狩猟による捕獲が禁止されている。一方で有害駆除は行われており、2006年に239頭、2008年に67頭、2010年に182頭が捕獲されている。1998 - 1999年度における生息数は280 - 680頭、2004 - 2005年度における生息数は300 - 740頭と推定されている。
絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト)
四国山地のツキノワグマ(四国個体群)
四国山地では、1970年代後半に愛媛県と香川県で絶滅し、1990年代以降は確実な生息が報告されているのは剣山周辺(高知県北東部・徳島県南西部)に限定される。分布域が非常に限定的であることにくわえて、イノシシやニホンジカ用の罠による混獲・道路建設による影響が懸念されている。1986年に高知県、1987年に徳島県、1994年に四国全域で狩猟による捕獲が禁止されている。1996年時点での徳島県における生息数は12頭以上、高知県における生息数は2 - 10頭と推定されている。
絶滅のおそれのある地域個体群(環境省レッドリスト)
九州地方のツキノワグマ(九州個体群)
九州の個体群は捕獲例が1941年、確実な目撃例が幼獣の死骸が発見された1957年以降はなく絶滅したと考えられている。1987年に捕獲例もあるが頭骨の計測から中国地方以北の個体であることが示唆され、ミトコンドリアDNAの分子系統解析でも福井県から岐阜県にかけての個体群と一致する解析結果が得られた。そのため琵琶湖以東の個体あるいは琵琶湖以東の個体に由来する個体が人為的に移入された後に捕獲されたと考えられている。環境省は2007年の第3次レッドリストでは絶滅のおそれのある地域個体群として評価していたが、分子系統解析などの報告を受け九州個体群が絶滅した可能性が高いとして2012年の第4次レッドリストから削除している。それ以前から祖母・傾山系や九州山地・脊振山地では目撃例があるが、仮に野生個体がいても本州からの移入個体が発見されたという前例から遺伝的解析を行わないと九州の個体群とは断定できないという問題がある。宮崎大学の岩本俊孝名誉教授は、クマは長距離を泳げず、たまたま1頭が泳いで海を渡ってもオスとメスが揃わなければ繁殖できないとして、海を渡ってあらたに九州に来ることは考えにくいとしている。


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