ダイヤモンド
ダイヤモンド(英: diamond [ˈdaɪəmənd])は、炭素のみからなる鉱物。炭素の同素体の一種でもある。モース硬度は10であり、鉱物中で最大の値を示す。一般的に無色透明で美しい光沢をもつ。ダイヤとも略される。和名は「金剛石(こんごうせき)」また、四月の誕生石。
概要[編集]
採掘によって得られるもの(「天然ダイヤモンド」)と、合成によって得られるもの(「合成ダイヤモンド」)がある。
ダイヤモンドの結晶は、等軸晶系であり、多くが八面体や十二面体をしている。地球内部の非常に高温高圧な環境で生成されるダイヤモンドは定まった形では産出されず、必ずしも角張っているわけではない。
炭素の同素体にはダイヤモンド、グラファイト(黒鉛)、フラーレンなどがあり、それぞれ結合に使われている価電子の数が異なっている。その中でダイヤモンドはダイヤモンド結晶構造(英語版)と呼ばれる、炭素Cの価電子4個が全て結合に使われている構造の物質である。
- 性質
- 実験で確かめられている中では天然で最も硬い物質である。光を透過する(透明)。熱伝導率が非常に高い。電気を通さない(ダイヤモンド結晶の原子には不対電子が存在しないため)。
- 用途
- 主な用途は、宝飾目的(宝石)や工業目的である。
- 工業目的としては、ダイヤモンドの諸性質を活かして、研磨材、金属加工の超精密加工用バイト、線引き用のダイス、超高圧アンビル(#ダイヤモンドアンビルセル)などの加工工具や耐摩工具、また医療用ナイフ、ヒートシンクなど。
- 各国語の呼び方
- ダイヤモンドという名前は、古代ギリシア語の αδάμας(adámas 征服できない、屈しない)に由来する。それが古代ローマのラテン語で adamans となり、中世ラテン語では変化形の diamas も使われて、それが古フランス語へ入り、古フランス語から中英語へと入り英語では diamond となった。
- 現在、イタリア語・スペイン語・ポルトガル語では diamánte(ディアマンテ)、フランス語では diamant(ディアマン)、ポーランド語では diáment(ディヤメント)、漢語表現では金剛石と鑽石(中国語のみ、簡体字中国語: 钻石)という。ロシア語では диама́нт(ヂヤマント)というよりは алма́з(アルマース)という方が普通であるが、これは特に磨かれていないダイヤモンド原石のことを指す場合がある。磨かれたものについては бриллиа́нт(ブリリヤント)で総称されるのが普通。
天然ダイヤモンド[編集]
採掘によって産出されるダイヤモンド。
産出地と地質構造[編集]
ダイヤモンドはマントル起源の火成岩であるキンバーライトに含まれる。キンバーライトの貫入とともにマントルにおける高温・高圧状態の炭素(ダイヤモンド)が地表近くまで一気に移動することでグラファイトへの相転移を起こさなかったと考えられている。このため、ダイヤモンドの産出地はキンバーライトの認められる地域、すなわち安定陸塊に偏っている。
ダイヤモンドの母岩であるキンバーライトは古い地質構造が保存されている場所にしか存在せず、地質構造の新しい日本においてダイヤモンドは産出されないというのが定説とされてきた。しかし2007年、1μm程度の極めて微小な結晶が日本の愛媛県四国中央市産出のかんらん岩から発見された。
産出量[編集]
# | 国名 | 生産量(カラット) |
---|---|---|
1 | ロシア | 41,923,910 |
2 | ボツワナ | 24,509,939 |
3 | カナダ | 16,249,217 |
4 | コンゴ民主共和国 | 9,908,997 |
5 | 南アフリカ共和国 | 9,660,233 |
6 | アンゴラ | 8,763,309 |
7 | ジンバブエ | 4,461,450 |
8 | ナミビア | 2,054,227 |
9 | レソト | 727,736 |
10 | シエラレオネ | 688,970 |
世界計 | 120,040,876 |
2022年時点の総産出量は1億2004万カラットであった。国別の生産量(単位カラット)を次にに示す(カラットは宝石の質量を表すのに良く用いられる単位で、1カラットは0.2グラムに等しい)。これら上位10カ国だけで、世界シェアの99 %を占める。
採掘[編集]
ダイヤモンドの採掘は、古くは鉱床の近くの河原などの二次鉱床で母岩から流れ出した鉱石を探し出す方式が主流であった。1867年にオレンジ自由国と英領ケープ植民地との国境付近でダイヤモンドが発見され、その東隣にダイヤモンドの鉱床たる母岩があると地質学者が突き止めたことで方式が変わった。その母岩のある地域はキンバリーと名付けられ、母岩を粉砕して大量の岩石を処理し、その中からダイヤモンドの鉱石を探し出す方式が以後主流となった。キンバリーの最初の鉱床には、現在ビッグ・ホールと呼ばれる大穴が開いており、観光地となっている。このキンバリーの鉱床の中からデ・ビアス社が産声を上げ、ダイヤモンドの世界市場を支配することとなった。1967年には独立したばかりのボツワナ共和国北部のオラパ鉱山において大鉱床が発見され、その後も次々と鉱床が発見されたことでボツワナが世界2位のダイヤモンド生産国となり、その利益によってボツワナは「アフリカの奇跡」と呼ばれる経済成長を遂げることに成功した。
加工[編集]
採掘したダイヤモンドの研磨作業は採掘国とは別の国で行われることが一般的で、2022年時点では90%がインドで加工されており、特に加工業者が集積するスーラトは「ダイヤモンド・シティー」と呼ばれている。
作業は非正規労働者が行っており、社会情勢などで一方的に解雇されるなど雇用の調整弁として弱い立場に置かれている。
合成ダイヤモンド[編集]
19世紀末のアンリ・モアッサンの実験など、ダイヤモンドを人工的に作ることは古くから試みられてきたが、実際に成功したのは20世紀後半になってからである。
1955年3月、工業用のダイヤモンドを研究していたゼネラル・エレクトリックが、高温高圧合成により初めてダイヤモンド合成に成功した。研究部門はハイペリオン・マテリアルズ&テクノロジーズに分社化し、工業用のみを取り扱っている。
ゼネラル・エレクトリックの発表後、スウェーデンのASEA社が数年前にダイヤモンド合成に成功していたという発表がされたが、ASEA社では宝飾用ダイヤモンドの合成を狙っていたため、ダイヤモンドの小さな粒子が合成されていたことに気づいていなかった。
現在では、ダイヤモンドを人工的に作成する方法は複数が存在する。