セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメント(英語: sexual harassment、セクシュアルハラスメント、セクハラ、性的嫌がらせ)とは性的嫌がらせのことであり、性的言動によって不利益を受けたり、労働環境などが害されるハラスメントである。
概説[編集]
セクシャルハラスメント(セクハラ)は労働問題の中でも数の多いトラブルであり、都道府県労働局に寄せられた男女雇用機会均等法に関する相談では、2012年度から2014年度の3年間を通じてつねに相談件数の4割以上を占めている。また、スクール・セクシュアル・ハラスメントも日常的に発生しており、例えば2016年度(平成28年度)に「わいせつ行為及びセクシュアル・ハラスメント」で懲戒処分を受けた教育職員は226人であった(男性223人・女性3人)。
職場におけるセクシャルハラスメントにおいては、男女雇用機会均等法の規定により、企業は解決のための措置を取らなければならない。その一方で男女雇用機会均等法には加害者に対する刑事上の処罰規定はないため、加害者に対しては、各組織によって懲戒処分がなされ、悪質なケースでは刑事上の対応として刑法(不同意わいせつ等)や迷惑防止条例等で対応することになる。また、被害者側は被害について損害賠償請求ができる(民法709条等)。なお、職場や学校のガイドライン等ではセクハラの定義をやや抽象的な言述に留め、「相手の意思に反して不快や不安な状態に追いこむ性的な言葉や行為」と具体的な言及は避けることがある。この場合、特定の行為がセクハラに当たるか否かの判定基準は人事院規則などが別に定め、より具体的な事例として、異性にとって性的に不快な環境を作り出すような言動(職場に水着写真を貼るなど)をすることや、自分の行為や自分自身に対して相手が「不快である」と考えているにも関わらず、法令や契約の履行以外での接触を要求すること等が定義される。このような性質から、行為者が自己の行為をセクシャルハラスメントに当たるものと意識していないこともあり、その認識の相違によって人間関係の悪化が長期化、深刻化する例も見られる。
対象者の性別については、加害者が男性、被害者が女性となる場合がほとんどである。ただ、用語の本来の意味では身体的な性別は無関係であり、たとえば2007年(平成19年)4月1日施行の改正男女雇用機会均等法では、男性から女性、女性から男性、男性から男性、女性から女性の全ての場合で禁止されている。また、雇用管理上必要な「措置」をとるよう事業主に義務付けられ、従来の「配慮義務」より厳しくなり、是正指導に応じない場合は企業名が公表される。しかし、まだ日が浅いこともあり、十分な対策を講じていない企業もある(具体的事例は後述)。そのためセクハラ被害を訴え出ることが恥ずかしい、相談しにくいと感じ、内在化しやすい。またセクハラ被害を訴えるとセクシュアリティを侮辱されるなど、二次被害や二重の性差別に遭う事もある。
自認する性別と異なる振る舞いや性役割を他者から要求されて精神的な苦痛を覚える性同一性障害者の問題や、同性愛者に対する差別的言動の問題もセクシャルハラスメントを論ずる際に欠かすことができない視点となりつつある(SOGIハラ)。2014年7月からは同性愛やトランスジェンダーなどLGBTに対する差別的言動もセクハラであるとし、雇用主は措置義務を負うこととなった。2022年5月、女性として生活しているトランスジェンダーの会社員は、SOGIハラやセクシャルハラスメントにより精神的な被害を受けたとして、勤め先のピクシブ株式会社と元上司に合わせて550万円余りの賠償を請求した。会社員は「なぜ女装しているんだ」などと言われたり、興味本位で体を触ったり猥褻な話をされたりするハラスメントを継続的に受けていた。