スルガ銀行
スルガ銀行株式会社(スルガぎんこう、英語: Suruga Bank Ltd.)は、静岡県沼津市に本店を置き静岡県・神奈川県を主たる営業エリアとする日本の地方銀行である。実店舗は五大都市圏でも展開しており、インターネットバンキングでは全国展開している。沼津市・海老名市の指定金融機関。略称は『スルガ銀』。
概要[編集]
1887年(明治20年)に岡野喜太郎が結成した共同社を前身として、1895年(明治28年)に設立された。「スルガ銀行」の表記は、同行の商号が株式会社駿河銀行であった1990年(平成2年)から使用し、2004年(平成16年)に正式に商号とした。
インターネットバンキングへの着目や他業態との提携など、耳目を引く個性的な営業戦略を次々と打ち出し、インターネット支店(ネット支店)を開設した2000年(平成12年)前後には、株価が一時2,590円とバブル期をはるかに超える高値で取引されたが、2018年に1兆円を超える不適切融資が発覚すると、株価は620円まで下がりストップ安となった。
創業者一家である岡野家による同族経営で知られていたが、不適切融資問題を受けて金融庁より関係の清算を求められ、一族は役員を退陣、一族や関連企業が保有していた株式も2019年10月に大手家電量販店「ノジマ」に売却された。その結果、ノジマが当行の筆頭株主になり、2020年4月には副会長にノジマ社長の野島広司が就任、翌5月に両者の資本業務提携が発表された。
2020年には、SGホールディングスから招聘した副社長嵯峨行介が社長に昇格、ソニーライフ・エイゴン生命保険(現ソニー生命保険)社長の加藤広亮を副社長に、住友銀行(現三井住友銀行)出身の峯村悠吾を取締役に据え、企業体質の改善に乗り出した。
しかし、ノジマが構想したフィンテックとITの融合は成果が出ず、再建方針や意思決定のスピード感を巡り、経営陣と対立を深め、ノジマは2021年6月29日の株主総会で取締役の過半を刷新する人事案を提示するも、経営陣に退けられると、経営陣への不信感を強めたノジマは、野島が会長に就任する人事案を固辞し、提携解消を申し出、野島は副会長を退任することが発表された。その後、2022年3月8日にノジマとの資本提携を解消し、翌9日に同社が保有しているスルガ銀行株の全てを総額約174億円(1株407円)で買い取った。
2023年5月18日、クレジットカード会社「クレディセゾン」と資本業務提携することを発表した。同年7月3日、クレディセゾンはスルガ銀行株式の15.12%を取得し、持分法適用会社とした。
沿革[編集]
- 1895年(明治28年)10月19日 - 株式会社根方銀行設立。
- 1896年(明治29年)12月28日 - 商号を株式会社駿東実業銀行に変更。
- 1912年(明治45年)7月19日 - 商号を株式会社駿河銀行に変更。
- 1923年(大正12年)7月31日 - 株式会社静岡実業銀行を合併。
- 1927年(昭和2年)3月1日 - 株式会社松田銀行を合併。
- 1928年(昭和3年)4月1日 - 株式会社富士銀行(現在のみずほ銀行の前身行とは異なる)を合併。
- 1943年(昭和18年)12月1日 - 株式会社駿河貯蓄銀行を合併。
- 1963年(昭和38年)11月15日 - 東京証券取引所第二部に株式を上場。
- 1965年(昭和40年)2月1日 - 東京証券取引所市場第一部に株式を上場。
- 1973年(昭和48年)6月18日 - オンラインシステム全店稼動。
- 1991年(平成3年)10月1日 - 熱海信用組合と合併。
- 2004年(平成16年)10月1日 - 商号をスルガ銀行株式会社に変更。
- 2007年(平成19年)
- 7月 - 指静脈認証装置の設置を開始。
- 11月29日 - 普通預金での生体認証対応ICキャッシュカードの取扱開始。
- 2008年(平成20年)
- 3月6日 - 日本アイ・ビー・エムに111億700万円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起。
- 5月30日 - 北海道札幌市に札幌支店を開店。
- 8月29日 - 福岡県福岡市中央区天神に福岡支店を開店。
- 10月1日 - 宮城県仙台市青葉区中央の仙台マークワン16階に仙台支店・ドリームプラザ仙台を開店。
- 2009年(平成21年)4月21日 - 京都府京都市下京区に京都支店・ドリームプラザ京都を新設。
- 2012年(平成24年)
- 3月29日 - 前述の日本IBMを相手取っての訴訟で、東京地裁はスルガ銀行側の訴えを認める判決。
- 4月23日 - 東京支店柏出張所・ドリームプラザ柏を千葉県千葉市中央区新町のセンシティタワー21階に移転し、東京支店千葉出張所・ドリームプラザ千葉に変更。
- 5月22日 - 広島県広島市中区大手町に大阪支店広島出張所・ドリームプラザ広島を新設。
- 2013年(平成25年)9月26日 - 勘定系システムの開発失敗の損害賠償を求める控訴審で東京高裁、日本IBMの賠償を41億に減額する判決を下し、その後両者とも上告する。
- 2014年(平成26年)
- 1月6日 - 勘定系システムをBankVisionへリプレース。
- 2月24日 - 川崎市幸区のミューザ川崎セントラルタワー9階に川崎支店を開設。
- 7月14日 - 未実施だった勘定系システムリプレースに伴う通帳変更を実施。
- 2015年(平成27年)
- 4月1日 - 保険事業を営むアイシーの全株式を取得。完全子会社化した上で、ライフナビパートナーズに商号変更(2020年5月1日にLNP株式会社に商号変更し、2020年11月27日清算)。
- 6月15日 - 広島出張所を支店に昇格させ移転オープン。
- 7月9日 - 勘定系システムの開発失敗の損害賠償を求める訴訟で、最高裁第2小法廷は双方の上告を退ける決定をし、日本IBMに約41億7千万円の支払いを命じた二審の東京高裁判決が確定したことが明らかとなる。
- 2018年(平成30年)
- 9月7日 - 不正融資問題を受けて、同日付で、岡野光喜会長兼CEO、米山明広社長ら役員5名が引責辞任し、有国三知男取締役が社長に昇格する人事を発表(後述)。
- 10月5日 - 金融庁は不動産投資向けの新規融資を6カ月間禁じる一部業務停止命令を出した。資料改竄などの不正融資以外にも反社会的勢力への融資といった問題があることを理由にあげている。一部業務停止命令は2013年にみずほ銀行に出されて以来(みずほ銀行暴力団融資事件)。
- 11月30日 - 金融庁に業務改善計画を提出。「創業家本位の企業風土を抜本的に改めることが改革の前提条件」と明記した上で、社内ガバナンスの再構築、投資用不動産で不適切な融資を行った一部債務者への対応などを盛り込まれた。
- 2020年(令和2年)
- 5月29日 - 仙台支店を東京支店に統合。
- 10月16日 - 広島支店を大阪支店に統合。
- 11月13日 - 京都支店を大阪支店に統合。
- 2023年(令和5年)
- 5月18日 - クレディセゾンとの間で資本業務提携締結を発表。
- 7月3日 - 自己株式の処分によりクレディセゾンが株式の15.12%を取得、同社の持分法適用会社となる。
歴代頭取・社長[編集]
代 | 氏名 | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 岡野喜太郎 | 1895年 - 1957年 | 1864年生 1965年没 豆陽中学校中退 |
2 | 岡野豪夫 | 1957年 - 1964年 | 1890年生 1964年没 慶大理財科卒 |
3 | 岡野喜一郎 | 1964年 - 1981年 | 1917年生 1995年没 慶大法卒 |
4 | 岡野喜久麿 | 1981年 - 1985年 | 1925年生 2015年没 |
5 | 岡野光喜 | 1985年 - 2016年 | 1945年生 慶大経卒 |
6 | 米山明広 | 2016年 - 2018年 | 1965年生 明大工卒 |
7 | 有国三知男 | 2018年 - 2020年 | 1966年生 立教大経卒 |
8 | 嵯峨行介 | 2020年 - 2023年 | 1964年生 法政大法卒 |
9 | 加藤広亮 | 2023年 - | 1966年生 京都大文卒 |
連結子会社[編集]
2023年3月31日現在。
- スルガスタッフサービス株式会社
- ダイレクトワン株式会社
- 株式会社エイ・ピー・アイ
- スルガカード株式会社
- スルガ・キャピタル株式会社
- スルガコンピューターサービス株式会社
実店舗展開[編集]
静岡県は本店並びに県庁内を含めて65店、神奈川県は県庁内を含めて38店ある(本店所在県でない神奈川県の営業基盤は第二次世界大戦前からのもの)。進出都道府県数は11(2020年6月30日現在)。
一方愛知県は名古屋市の1店のみ有し、静岡県と隣接する豊橋市からは撤退。地盤の静岡県、神奈川県以外の店舗は法人営業中心であったが、インターネット支店を展開し始めた2000年(平成12年)より個人用住宅ローン(主に不動産販売会社と提携したもの)の相談・手続窓口「ドリームプラザ」を併設するようになり、埼玉県大宮市(現:さいたま市大宮区)に東京支店大宮出張所を新設する形で関東地方北部へ進出。
その後、2008年(平成20年)5月に北海道札幌市、同年8月に福岡県福岡市、同年10月1日に宮城県仙台市(2020年(令和2年)5月29日に東京支店に店舗統合)、2009年(平成21年)4月21日に京都府京都市(2020年(令和2年)11月13日に大阪支店に店舗統合)、2012年(平成24年)5月22日には広島県広島市(2020年(令和2年)10月16日に大阪支店に店舗統合)に出店。地方銀行ながら日本五大都市圏全てに進出し、北海道から九州まで四国を除く日本の全ての地方に店舗を構えた(その後の店舗統合により東北地方・中国地方から撤退した)。なお、これらドリームプラザ併設店舗は、住宅ローン業務を中心としたものでほとんどが空中店舗であるものの併設の支店、出張所では通常の銀行業務を扱い、ATMも設置している。
静岡・神奈川以外の実店舗所在地[編集]
- 北海道札幌市(1店舗 - 札幌)
- 埼玉県さいたま市(1店舗 - 大宮)
- 千葉県千葉市(1店舗 - 千葉)
- 東京都23区(3店舗 - 東京、渋谷、新宿)
- 愛知県名古屋市(1店舗 - 名古屋)
- 大阪府大阪市(1店舗 - 大阪)
- 福岡県福岡市(1店舗 - 福岡)
インターネット支店[編集]
特にインターネットバンキングに力を入れており、多くの企業と提携しインターネット支店を開設している(店番号順に記載)。
- 180 個人専用支店 (旧ゆうちょ専用支店)
- 696 イービジネスダイレクト支店
- イービジネスダイレクト支店CLUB USEN - 株式会社USEN
- 698 ダイレクトワン支店 - ダイレクトワン株式会社
- 699 ドリームダイレクト支店
- 850 ANA支店 - 全日本空輸株式会社
- 852 タウンネットワーク支店 - タウンネットワークサービス株式会社
- 855 Tポイント支店 - カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
- 856 リクルート支店 - 株式会社リクルートホールディングス
- 880 ソネット支店 - ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社
- 881 ハウジングローン支店
- 882 Dバンク支店 (旧ネットバンク支店)
- Dバンク支店dポイントクラブ応援バンク - 株式会社NTTドコモ
- Dバンク支店ALSOK CLUB - 綜合警備保障株式会社
- Dバンク支店Gポイントクラブ - ジー・プラン株式会社
現存しないインターネット支店[編集]
いずれもDバンク支店に店舗統合している。
- ダイレクトバンク支店 (旧ソフトバンク支店)
- エスイーバンク支店
- マイ支店
- OCN支店
独自のサービス[編集]
SURUGA VISAデビットカード[編集]
VISAデビットと日本版のJ-Debitの2種類の即時決済が可能なカード(デビットカード)であり、また2007年(平成19年)2月15日以降に発行されたカードは、ICキャッシュカードとしても利用可能。 その後、生体認証(指静脈)キャッシュカードも発行された。
みまもりサービス[編集]
家に置いているキャッシュカードの盗難対策、不正利用対策機能で、ALSOK(綜合警備保障株式会社)のホームセキュリティに連動し、キャッシュカードを使用不能にする。
バイオセキュリティシステム[編集]
掌の静脈による生体認証で本人確認を行う。次のような商品に利用されている。
- バイオセキュリティ預金(バイオセキュリティ普通預金及びバイオセキュリティ定期預金)
- バイオセキュリティ投資信託
- バイオセキュリティ個人年金保険
- バイオセキュリティ個人向け国債
アクセスビークル[編集]
ATMも搭載した移動店舗車で、神奈川県内の決まった場所(3か所)を週2~3回訪れ、営業している。このアクセスビーグルには同行社員も同乗し、ローンなどの相談も受け付けている。
特定目的ローン[編集]
鉄道模型やロードバイク、一眼レフカメラなど、各種の高額商品の購入資金として使える特化型のローンを取り扱っている。