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スターリンク

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スターリンク (Starlink) は、アメリカ合衆国の民間企業スペースXが運用している衛星インターネットアクセスサービス、並びにこれを実現する衛星コンステレーション  。

概要[編集]

スターリンクはスペースXが運営する衛星インターネットコンステレーションであり、地球上のほぼ全域での衛星インターネットアクセスを可能にする。

このコンステレーションは地球低軌道(LEO)上に展開され、2023年9月時点で3000機を超える小型衛星で構成されている。小型化・量産化により製造と打ち上げのコスト削減を実現した人工衛星を経由して、利用者が所有する専用の無線通信端末キットと各国に設置された地上ステーションを結び、ユーザー居住地の地上インフラに依らない、低価格での衛星インターネットアクセスサービスを提供する。しかし実際にサービスが提供されるのはスペースXがサービス提供のライセンスを取得した国に限られ、2022年末時点で45カ国でサービスを提供している。

スターリンクはワシントン州レドモンドにあるスペースXの衛星開発施設で研究、開発、製造、軌道制御が行われている。10年にもおよぶ計画の総コストは、設計・製造・打ち上げなど100億ドル近くに達するとスペースXは2018年5月に見積もっている。

開発は2014年に始まった。2018年2月にプロトタイプのテストフライト衛星2基を打ち上げた。2019年5月には、商用サービスに向けた最初の大規模な打ち上げが実施され、追加のテスト衛星と60基の運用衛星が配備された 。スペースX社は一度に最大60基の衛星を打ち上げ、2021年後半か2022年までにほぼ全世界にサービスを提供するために、260kgの宇宙船を1,584基配備することを目指していた。

2019年10月15日、米国連邦通信委員会(FCC)は、国際電気通信連合(ITU)に、FCCが既に承認している1万2000基のスターリンク衛星を補完するための3万基の追加衛星用の周波数を手配するための申請書を、スペースXに代わって提出した。

2020年、北アメリカ大陸とヨーロッパで試験運用が始まった。2022年10月11日、SpaceXはTwitterで日本でのサービス開始を発表 、東日本での注文受付を開始。徐々にサービス提供地域を増やし、2023年夏までに離島を含む日本全域がサービス提供地域となった(北方領土や竹島といった特殊な土地を除く) 。

2021年までに、スペースXはGoogle Cloud PlatformおよびMicrosoft Azureと契約を結び、地上でのネットワークインフラをスターリンク用に提供することで提携した。

天文学者は、この計画が地上からの天体観測に与える影響や、既に混雑している軌道環境に衛星がどのように追加されるかについて懸念を示している。 スペースXは、衛星の運用時の輝度を下げることを目的としたいくつかのアップグレードを実施することで、こうした懸念を軽減しようとしている。 衛星にはクリプトンを推進剤とするホールスラスタが搭載されており、寿命が尽きると軌道から離れることができる。また、衛星は地上から送られる追跡データに基づいて、自律的に衝突を回避するように設計されている。

スペースXは、スターリンクを軍用や、科学・探検などの用途に販売することも計画しているほか、2020年代中頃までに総数約12,000基の人工衛星を3階層にわたって展開することを計画している。最初が高度550kmの約1,600基の衛星、次が高度1,150kmのKu/Kaバンドを用いる約2,800基の衛星、さらに高度340kmのVバンドを用いる約7,500基の衛星である。

打ち上げ履歴[編集]

No. ミッション 打ち上げ日時 (UTC) 発射場 打ち上げ機 軌道 軌道傾斜角 打ち上げ衛星数 備考 結果
- Tintin v0.1 2018年2月22日14:17 ヴァンデンバーグ空軍基地 SLC-4E F9 FT ♺B1032.2 LEO 97.44° 2 2基の試験衛星はTintin A/Bと呼ばれる(MicroSat-2a/2b) 成功
1 v0.9 2019年5月24日 02:30 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1049.3 LEO ~53° 60 衛星間リンクを持たない初期型の初の大規模打ち上げ。 成功
2 v1.0 L1 2019年11月11日 14:56 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1048.4 LEO 53° 60 運用バージョンの初打ち上げ。Kaバンドアンテナが追加されている。 成功
3 v1.0 L2 2020年1月7日 02:09 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1049.4 LEO 53° 60 1基はダークサットと呼ばれる黒く塗装された機体 成功
4 v1.0 L3 2020年1月29日 14:06 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1051.3 LEO 53° 60 成功
5 v1.0 L4 2020年2月17日 15:05 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1056.4 LEO 53° 60 成功
6 v1.0 L5 2020年3月18日 12:16:39 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1048.5 LEO 53° 60 成功
7 v1.0 L6 2020年4月22日 19:30:30 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1051.4 LEO 53° 60 成功
8 v1.0 L7 2020年6月4日 01:25:00 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1049.5 LEO 53° 60 1基はバイザーサットと呼ばれるアンテナに日除けを付けた機体。 成功
9 v1.0 L8 2020年6月13日 09:21:18 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1059.3 LEO 53° 58 3機のプラネット・ラボ社の地球観測衛星 (SkySat 16-18) も同時に打ち上げ。 成功
10 v1.0 L9 2020年8月7日 05:12:00 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1051.5 LEO 53° 57 57機のスターリンク衛星と2機のBlackSky衛星が打ち上げられた。この打ち上げより、全機がバイザーサット仕様となっている。 成功
11 v1.0 L10 2020年8月18日 14:31:16 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1049.6 LEO 53° 58 3機のプラネット・ラボ社の地球観測衛星(SkySat 19-21)も同時に打ち上げ。 成功
12 v1.0 L11 2020年9月3日 12:46:14 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1060.2 LEO 53° 60 成功
13 v1.0 L12 2020年10月6日 11:29:34 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1058.3 LEO 53° 60 成功
14 v1.0 L13 2020年10月18日 12:25:57 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1051.6 LEO 53° 60 成功
15 v1.0 L14 2020年10月24日 15:31 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1060.3 LEO 53° 60 成功
16 v1.0 L15 2020年11月25日 02:13:12 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1049.7 LEO 53° 60 成功
17 v1.0 L16 2021年1月20日 13:02:00 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1051.8 LEO 53° 60 成功
- v1.0 Tr-1 2021年1月24日 15:00:00 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1058.5 LEO 97.5° 10 ライドシェア(相乗り)ミッション「Transporter-1」として、10機のスターリンク衛星と133機の小型衛星が打ち上げられた。極軌道への初の打ち上げとなる。また、衛星間レーザー通信システムを試験的に搭載した機体となっている 成功
18 v1.0 L18 2021年2月4日 06:19:00 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1060.5 LEO 53° 60 成功
19 v1.0 L19 2021年2月16日 03:59:37 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1059.6 LEO 53° 60 大西洋上でファルコン9ブースターを紛失。 成功
20 v1.0 L17 2021年3月4日 08:24:54 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1049.8 LEO 53° 60 第2段が軌道離脱に失敗し、3月26日に米国オレゴン州からワシントン州にかけた上空に再突入した。 成功
21 v1.0 L20 2021年3月11日 08:13:29 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1058.6 LEO 53° 60 成功
22 v1.0 L21 2021年3月14日 10:01:26 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1051.9 LEO 53° 60 成功
23 v1.0 L22 2021年3月24日 08:28:24 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1060.6 LEO 53° 60 成功
24 v1.0 L23 2021年4月7日 16:34:18 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1058.7 LEO 53° 60 成功
25 v1.0 L24 2021年4月29日 03:44:00 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1060.7 LEO 53° 60 成功
26 v1.0 L25 2021年5月4日 19:01 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1049.9 LEO 53° 60 成功
27 v1.0 L27 2021年5月9日 06:42 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1051.10 LEO 53° 60 成功
28 v1.0 L26 2021年5月15日 22:56 KSC LC-39A F9 B5 ♺B1058.8 LEO 53° 52 カペラ・スペース社の小型衛星とTyvak社の地球観測衛星 (Tyval 0130)も同時に打ち上げ。 成功
29 v1.0 L28 2021年5月26日 18:59 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1063.2 LEO 53° 60 成功
- v1.0 Tr-2 2021年6月30日 19:31 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1060.8 LEO 97.5° 3 ライドシェア(相乗り)ミッション「Transporter-2」の一部。

極軌道に対する2回目の打ち上げ。

成功
30 v1.5Group 2-1 2021年9月14日 03:55:50 ヴァンデンバーグ空軍基地 SLC-4E F9 B5 ♺B1049.10 70.0° 51 ヴァンデンバーグ空軍基地からの初の打ち上げであり、初の太陽同期軌道でない高軌道傾斜角の打ち上げ。 成功
31 v1.5Group 4-1 2021年11月13日 11:19:30 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1058.9 53.2° 53 Group 4のスターリンク衛星の初の打ち上げ。 成功
32 v1.5Group 4-3 2021年12月2日 23:12:15 CCAFS SLC-40 F9 B5 ♺B1060.9 53.2° 48 成功
33 v1.5Group 4-4 2021年12月18日 9:24:40 ヴァンデンバーグ空軍基地 SLC-4E F9 B5 ♺B1060.9 53.2° 51 予定

国ごとの提供状況[編集]

衛星を使ったサービスを提供するには、国際電気通信連合(ITU)の規定や長年の国際条約により、各国の当局から許可を得る必要がある。その結果、スターリンクのネットワークは緯度約60度以下でほぼ全世界をカバーしているにもかかわらず、農村部や十分なサービスが行き届いていない地域へのブロードバンドサービスが約12カ国でしか提供できていない。また、スペースXはサービスを展開するための手続きを行う必要があり、その状況によって提供される地域、順序、期間が左右される。例えば、スペースXは2020年6月にカナダのみで正式に許可を申請し、2020年11月に規制当局が認可したことで、その2ヶ月後の2021年1月にサービスを展開し始めた。

2022年末現在、45カ国でサービスを提供しており 、そのほか多くの国で規制当局に認可を申請している。アメリカではTモバイルUSと提携し、2023年末までに携帯電話の電波が届かない地域に対して、音声通話やデータ通信サービスなどが使用できるようにすることを発表した。日本では、KDDIがスペースXと業務提携し、2022年に1,200箇所の基地局を介して地方の顧客向けにより高速な通信の提供を目指すことを発表。同年12月に静岡県熱海市の初島にスターリンクを利用した最初のau基地局を設置した。2024年からはauのスマートフォンとスペースXの衛星を直接つなぐサービスも開始する予定。なお、法人向けプランについてはソフトバンクも2023年9月から、スカパーJSAT・NTTドコモ・NTTコミュニケーションズも同年内にそれぞれ提供することを発表している。

2022年ロシアによるウクライナ侵攻が始まると、ウクライナでは通信インフラが攻撃されるおそれが強まった。開戦2日後の2月26日、ウクライナのデジタル転換相を兼務するフョードロフ副首相は、Twitterでスターリンクの提供を要請。スペースXCEOのイーロン・マスクは2022年2月27日7時33分(日本標準時)、Twitterを通じて、スターリンクがウクライナで利用可能であると表明した。スターリンクは、ウクライナの部隊による無人航空機(ドローン)での偵察や攻撃、公的機関や市民による戦況などのSNSへの投稿に利用され、国土防衛戦や国際世論に対する情報・宣伝戦を支えている。

ウクライナでの利用者増加により、スマートフォン用のスターリンク接続システムは同年3月に一時、世界で最も多くダウンロードされたモバイルアプリになった。2022年10月14日、イーロン・マスクがウクライナでの無償提供は無期限に継続できないとTwitterに投稿。スペースXは継続する場合、アメリカ国防総省に資金提供を要求する旨の書簡を国防総省に送付した。その後、同月15日に前述の投稿を撤回し、ウクライナへの無償提供を継続することを表明した。また17日のツイートで書簡の内容を撤回したとイーロン・マスクは表明した。



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