ゴールデンカムイ
『ゴールデンカムイ』(GOLDEN KAMUY)は、野田サトルによる日本の漫画。『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて、2014年38号から2022年22・23合併号まで連載された。略称は「金カム」。単行本(全31巻)の累計発行部数は、2024年1月時点で2700万部を突破している。
2018年4月からテレビアニメが放送され、2024年1月には実写映画が公開された。
制作背景[編集]
前作である『スピナマラダ!』は10年近いアシスタント生活を続けていた中での初連載だったが、読者からの反応が少ないため編集長から「時間を無駄にして欲しくない」と連載終了を告げられ、わずか1年での完結となった。野田は反省点を意識しつつ、ヒット作で見返してやるという意気込みを原動力に本作の制作を開始。担当編集の大熊八甲とともに新連載の構想を1年近く模索し、女子体操・ロボコン・SFファンタジー・歴史冒険活劇など様々な企画案が出された。
野田の曽祖父は日露戦争に出兵した屯田兵であったことから、かねてより関連する作品を描きたいと希望を抱いていたところ、大熊から「次は猟師の話を描かないか」と提案され、開拓期の北海道で生き残った銀色の毛並みの狼を追いかける猟師を描いた熊谷達也の小説『銀狼王』を渡された。その主人公が「二瓶」という名前であり、偶然『スピナマラダ!』に登場するキャラクターと同姓であったことから運命を感じ、曽祖父の話を融合させて作品のテーマが生まれた。
物語の舞台を野田の出身である北海道に決め、当初は日露戦争帰りの若者を主人公にした「狩猟マンガ」として構想された。しかし、狩猟だけではネタ切れが早いと思われたため、道史の中から野田が興味を惹かれた」、「土方歳三」、「脱獄王」、「埋蔵金伝説」、「アイヌ」といった様々な題材を拾い上げて組み入れていき、本作が練り上げられた。物語の組み上げにはさらに1年という期間がかけられ、約2年間の準備期間を経て連載がスタートした。
特にアイヌに関しては、これまでのマンガで取り上げられることが少なかったため読者にとって新鮮であり、なおかつ取材に協力してくれたアイヌの人々から「可哀想なアイヌではなく、強いアイヌ」を描くことを期待されたため、迫害や差別といった暗い背景ではなく「明るく、おもしろいアイヌ」を描けば読者に受け入れられると確信したと語っている。また、料理に関する要素が強いことに関しては、作品構想の始めのテーマが狩猟であったこともあり、獲物を生活に活かしていく中で料理描写は必然と考えられたためだとしている。
本作の執筆にあたり、野田は「アップの作画にも耐えられる細密な資料が手元に絶対に必要」という理由から軍帽やマキリなどを収集し、三十年式小銃などの製作を特注で依頼した。また、「直接自分で現地に行って体感することが大事」という考えから北海道各地や樺太などへ取材に行き、狩猟に同行して脳みそや肝臓を実際に食している。さらに、アイヌ文化の監修や時代考証を専門家に依頼している。
本作はフルデジタルで描かれており、背景資料は北海道在住の写真家や野田の兄妹が撮影した写真が利用された。
野田は本作の連載開始直後、ヒットしたら『スピナマラダ!』の完全版を書かせてほしいと編集部に頼んでいたが、予想以上の大ヒットとなったことで完結後の設定を引き継いだ新作漫画の連載が決定した。
作風[編集]
明治末期、日露戦争終結直後 の北海道・樺太を舞台とした、金塊をめぐるサバイバルバトル漫画である。また、戊辰戦争・日露戦争・ロシア革命などの歴史ロマン要素のほか、狩猟・グルメ要素、アイヌなどの民俗文化の紹介要素も併せ持つ。さらに、ギャグや映画のオマージュ、ホラー要素も盛り込まれているため、「冒険・歴史・文化・狩猟グルメ・ホラー・GAG&LOVE!和風闇鍋ウエスタン!!」というキャッチコピーがつけられている。
タイトルの「ゴールデンカムイ」とは、英語(Golden)とアイヌ語(kamuy)を合わせた造語である。ラテン文字では「GOLDEN KAMUY(英語版、スペイン語版)」「GOLDEN KAMUI(仏版、イタリア版など)」、漢字では「黄金神威」(中国語(繁体字)版)、ハングルでは「골든 카무이」と表記されている。
作中では当時のアイヌの文化が豊富に描写・紹介されており、アイヌ語の表記に関しては、アイヌ語仮名の小書きも使用されているが、公式ツイッターやアニメのテロップなどでは「アシ(リ)パ」・「カムイモシ(リ)」のように括弧書きで表示されることもある。
評価[編集]
アイヌ文化を丁寧に描いているとして平取町アイヌ文化情報センターでも人気になっており、アイヌ民族博物館の職員は「文献や資料をよく調べている。文様も細かく描写されており、見応えがある」「全国の若い世代にアイヌ文化に興味を持たせるきっかけをつくったという点で貢献度は非常に大きい」と評価している。また、北海道アイヌ協会の理事長は、アイヌの料理や狩猟など風習・文化がリアルに表現されているとして「よく描かれている」と評価している。
2019年5月23日〜8月26日、イギリス・ロンドンの大英博物館で開催された日本のマンガをテーマにした展覧会「The Citi exhibition Manga」では、「女性を表している点。(中略)アイヌという少数民族の文化を描いている点」など「ダイバーシテイの理念を体現する作品になっている」という理由から、本作がキービジュアルに選ばれた。
2022年4月7日、松野博一官房長官(アイヌ政策推進本部長兼務)は記者会見にて「アイヌ文化が紹介されていることもあり、一般の方々がアイヌ文化に関心を高める上で効果があった」と雑誌連載完結について言及している。また、北海道知事である鈴木直道も原作のファンであると語っている。
年度 | セレモニー | 順位 | 備考 | 出典 |
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2015年 | コミックナタリー大賞 | 2位 | ||
2016年 | このマンガがすごい!2016オトコ編 | 2位 | ||
マンガ大賞2016 | 大賞 | |||
2017年 | 北海道ゆかりの本大賞コミック部門 | 大賞 | ||
2018年 | 小西財団漫画翻訳賞 | グランプリ | ※仏版 | |
Japan Expo Awards 2018 | マンガ部門 Daruma 脚本賞 | ※仏版 | ||
手塚治虫文化賞 | マンガ大賞 | |||
2021年 | 第24回文化庁メディア芸術祭 | マンガ部門ソーシャル・インパクト賞 | ||
2022年 | 第51回日本漫画家協会賞 | 大賞 | ||
2023年 | 第74回芸術選奨 | 文部科学大臣新人賞(メディア芸術部門) | ||
この15年に完結したマンガ総選挙 | 1位 |