ゲートボール
ゲートボールは、5人1組の2チーム対抗で行われる、日本発祥のスポーツ。漢字では門球と表記される。
概要[編集]
1947年、鈴木栄治(のちに改名して和伸となる。秋田市太平出身)が北海道芽室町において、クロッケーをヒントに考案した。元々は太平洋戦争後の物資不足で遊び道具のない子供のため、また子供の不良化防止のために作られた遊びだったが、高度経済成長期に高齢者向けスポーツとして爆発的に流行、現在では日本だけでなくアジア各国にも普及している。
近年では、「ゲートボール」という名称が「老人のスポーツ」の代名詞的な存在になるまで社会に浸透してしまい、それが若者への普及を妨げているという指摘から、高齢者のスポーツというイメージを払拭するため、2人制と3人制の競技に限り「リレーション」と改名されているが、定着はしていない。
1984年に日本ゲートボール連合が発足し、1985年に東京で第1回全日本ゲートボール選手権大会が開催された。毎年開催され、優勝チームには文部科学大臣杯が授与される。
1986年に札幌市円山競技場で第1回世界ゲートボール選手権大会が開催された。当初は毎年開催されていたが現在は4年に一度開催されている。
用具[編集]
- スティック
- 木製またはプラスチック、金属製の用具。かなづちの柄を長くしたような形をしている。ヘッドと呼ばれる部分でボールを打撃する。英語圏ではマレットと呼ばれる。
- ボール
- 合成樹脂でできている。1番ボールから10番ボールまで各1個ずつ、合計10個ある。奇数番号のボールは赤地に白い数字、偶数番号のボールは白地に赤の数字が書いてある。
- ゲート
- カタカナの「コ」の形をした金具。3本使用する。これを規定の位置にさしこんで、この下を定められた方向にくぐらせることを通過と呼び、通過すると得点(1点)を得られる。
- ゴールポール
- 杭のような形をした金具。これをコートの中央に刺してここにボールを当てる。当てると「あがり」になり、得点(2点)を得られる。
- ゼッケン
- 1番から10番まで各1枚ずつ、合計10枚使用する。
- カウンター
- 「カウンター」と呼ばれる道具を使う。15分経過の時(15分前)、20分経過の時(10分前)、25分経過の時(5分前)、30分経過の時(競技時間終了)の合計4回音が鳴るようになっていて、全てのボールの得点を記録できる。
- 腕章
- 監督は監督腕章を、主将は主将腕章を使用する。
なお、スティックは選手1人1人が用意するが、その他は主催者が用意するのが普通(ただしゼッケンや腕章類はチームで用意)。また、ここに挙げたのはゲートボールをする上で最低限必要なもので、この他にユニフォーム、帽子、シューズなども用意することがある。
ルール[編集]
チーム編成[編集]
- 1チームは5人。
- 公式ルールでは、この他に控え選手として3人まで登録することができる。
- さらに専任監督をつけることができる。専任監督として登録された人は選手を兼任することはできない。
- 控え選手を含む選手の中から主将を1人選出する。
- 5人より少ない人数でプレーする時は、1人が複数個のボールを持つ。
試合前の準備[編集]
- まず、チーム内での打順を決めておく。
- 次にチームの代表者(主将か監督)同士がじゃんけん、コイントス、くじなどの方法によって先攻か後攻かを決める。このとき先攻になったチームを「紅(あか)」、後攻になったチームを「白(しろ)」と呼ぶことが多いので、以降これに合わせる。
- 上記2つの組み合わせによって各選手の持ち玉が以下の表の通りに決定する。
- 持ち玉が決まったら、持ち玉と同じ番号のゼッケンを着用する。また、監督は監督腕章を、主将は主将腕章を着用する。なお、「1番ボールを持ち玉とする選手」を「1番」、「2番ボールを持ち玉とする選手」を「2番」、以下同様に「3番」、「4番」、…、「10番」と呼ぶことが多いので、以降それに合わせる。
試合の目的[編集]
試合が始まると「1番」→「2番」→…→「10番」→「1番」→…の順番に自分の持ち玉を打つ。試合の目的は、30分の競技時間内に相手チームよりも多くの得点を獲得することである。打った持ち玉に3つのゲートを「通過」させたり、ゴールポールに当てて「あがり」にしたりすることで得点でき、ゲート通過の場合は各1点、あがりの場合は2点が加点される。ただし、単純にゲートをくぐらせたりゴールポールに当てるだけでは「通過」や「あがり」にはならない。以下には「通過」や「あがり」になる条件を書く。
- 第1ゲート
- 第1ゲートはスタートエリアにボールを置き、ここから狙う。
- ボールが第1ゲートをくぐった場合に「通過」となる。ボールがゲート線(ゲート脚の「後方」を結んだ線)にかかっておらず完全にくぐっている状態が通過と見なされる。
- 第1ゲートをくぐれなかったボールはコートから取り除かれ、再び打順が回ってくるのを待ってスタートエリアから打ち直しとなる。
- 第1ゲートを通過したボールはそれ以降「あがり」になるまでコートから取り除かれることはなく、ボールが静止している位置から打つことができる。
- 第2ゲート
- 第2ゲート通過は第1ゲートを通過していることが前提条件となる。
- 第2ゲートは今ボールが静止している位置から狙う。
- 第2ゲートの足同士を結んだ直線でコートを切った時、第1ゲートのある方からない方に向かってくぐらせると「通過」となる。このとき、通過したボールが必ずしもコートの中に静止している必要はない。
- 第3ゲート
- 第3ゲート通過は第1ゲートと第2ゲートを通過していることが前提条件となる。
- 第3ゲートは今ボールが静止している位置から狙う。
- 第3ゲートの足同士を結んだ直線でコートを切った時、第1ゲートのない方からある方に向かってくぐらせると「通過」となる。このとき、通過したボールが必ずしもコートの中に静止している必要はない。
- ゴールポール
- 「あがり」は既に3つのゲート全てを通過していることが前提条件となる。
- ゴールポールは今ボールが静止している位置から狙う。
- ゴールポールには方向の制約は無く、ゴールポールにボールをぶつければ「あがり」となる。
- 1度「あがり」になったボールはその試合には2度と参加できない。また「あがり」になった選手の打順は、次から飛ばされる(たとえば「4番」があがったら、…→「2番」→「3番」→「5番」→「6番」→…となる)。
なお、ゲートを通過できなかったからといってペナルティがあるというわけではないので、物理的に無理だったり作戦上ゲート通過よりも大事なことがあるという場合はゲートを狙う必要はない。
タッチ[編集]
自分のボールを敵味方問わず他のボールにぶつけると「タッチ」となる(ただし1度タッチしたことのある相手には、1度打権を失って再び打順が回ってくるまでタッチできない)。「タッチ」をして、自分のボールとタッチされたボールが両方ともコート内に留まった場合、「スパーク」という特殊な打ち方でタッチしたボールを動かすことができる。「スパーク」は以下の手順で行う。
- まず、すべてのボールが静止するのを待ち、タッチした相手のボールを拾い、自分のボールが静止したところに持ってくる。
- 自分のボールを足でしっかりと踏む。
- 自分のボールに隣接するようにタッチした相手のボールを置き、自分のボールを踏んでいるのと同じ足で相手ボールも軽く踏む。
- 自分のボールをスティックでたたいて、その衝撃で間接的に相手のボールを飛ばす。
- 1度に複数個のボールにタッチした場合はタッチしたボール全てに対しこれを行う。この時、スパークを行う順番は自由であるが、複数のタッチボールを同時に持ち上げてはならず、1個ずつスパークを行う必要がある。
なお、スパークによって起きたことはすべて試合に反映される。つまり、たとえばスパークによって当てられて移動した相手のボールが第2ゲートを通過した場合は、そのボールの持ち主は第1ゲートしか通過させていなくても第2ゲート通過が記録される。
アウトボール[編集]
勢い余ってボールをコートの外に出してしまったり、スパークなどによってコートの外に出されたボールは「アウトボール」という扱いになる。アウトボールになったボールは次に打順が回ってくるのを待って、コートの10cm外からコートの中に打ち込む。ただしコートにボールを打ち込む際、他のボールにタッチしてしまった場合は再びアウトボールとなる。また、ゲート通過や「あがり」は無効となる(ゲート通過しても得点にならない。同様に、「あがり」にもならない。アウトボールになるわけではない)。
打権[編集]
ボールを打つ権利は次のように発生する。
- 打順が回ってくると無条件で1打分の打権が発生する。
- 自分の持ち玉がゲートを通過し、得点をすると1打分の打権が発生する(得点が発生したときに限る)。
- タッチをし、スパーク打撃が完了すると、1打分の打権が発生する。
- 自分のボールをアウトボールにしたり、反則をした場合は打権をすべて失う(スパークでアウトボールにするのはよい)。
- あがりになった時点で打権はすべて失う。
打権は加算方式なので、たとえば1打でゲート通過とタッチを同時に行う(通過タッチ 又は タッチ通過)と2打分の打権が発生し、これを「2打権」と呼ぶ(ただし、第1ゲートに関しては通過タッチは認められない)。一度の打撃で複数のボールにタッチした場合には、得られる打権は加算されず、一律で1打分の打権が与えられる。また、現在のルールでは「打権放棄」は認められておらず、必ず打撃を完了する必要がある。
反則[編集]
次に掲げる行為は故意・過失を問わず反則となる。反則に対するペナルティは反則を犯した選手の持ち玉をアウトボールにする、または反則前の状態に戻すというものである。また、反則によって動いたボールはアウトボールになるボールを除き審判の手によってもとの位置に戻される。アウトボールは反則が発生した場所から最も近いコート外の位置(直近外)へ移動させられる。
- 審判に打権発生を宣言されてから10秒以内にボールを打たなかった場合(第1ゲートを通過していない場合は打権を失うのみ)
- スパークした時、相手のボールが10cm以上動かなかった場合
- スパークした時、自分のボールが動いてしまった場合(スパークの衝撃でボールが踏んでいる足から外れた時など)
- 一度タッチしたことのある相手に再びタッチした場合(一度打権を失って、再び打順が回ってきた時にタッチするのはよい)
- アウトボールをコートに打ち込む際、他のボールにタッチした場合
- 他人のボールを、スパークなどの正規の方法以外で動かしてしまった場合(プレイのために移動していて、思わずボールを蹴るというケースが多い)、または自分のボールをスティックで打つ以外の方法で動かしてしまった場合(アウトボールでも触れてはいけない)
試合終了[編集]
ゲートボールの試合終了は次のようになっている。
- 5人全員が「あがり」となったチームが現れた場合、その時点で試合は終了となる(これを「パーフェクトゲーム」という)。ただし、パーフェクトゲームを達成したのが紅の場合は次の処置をとって試合終了となる。
- 最後にあがった選手の直後を打つ白の選手(1番が最後にあがった場合は2番、3番が最後にあがった場合は4番、以下同様に5番なら6番、7番なら8番、9番なら10番)が既にあがっている、もしくはアウトボールになっている場合はそのまま試合終了。
- それ以外の場合は最後にあがった選手の直後を打つ白の選手に1打分の打権を与え、その選手の打権が無くなった時点で試合終了となる。
- (ほとんどの試合がそうであるが)30分経過のシグナルが鳴った時点でパーフェクトゲームを達成したチームが現れなかった場合は、その時点でプレイ中の選手の打権が無くなった時点で試合終了となる。ただし、その選手が紅の選手だった場合は次の処置をとって試合終了となる。
- 30分経過時点でプレイ中だった選手の直後を打つ白の選手(1番の場合は2番、3番の場合は4番、以下同様に5番なら6番、7番なら8番、9番なら10番)が既にあがっている、もしくはアウトボールになっている場合はそのまま試合終了。
- それ以外の場合は30分経過時点でプレイ中だった選手の直後を打つ白の選手に1打分の打権を与え、その選手の打権が無くなった時点で試合終了となる。