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キャリア (国家公務員)

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キャリア官僚(キャリアかんりょう)とは、日本における国家公務員試験の総合職試験、上級甲種試験又はI種試験(旧外務I種を含む)等に合格し、幹部候補生として中央省庁に採用された国家公務員ないし官僚の俗称である。

概説[編集]

キャリア制度[編集]

高級官僚とその候補生の登用、昇進のシステムがキャリア制度(キャリアシステム)と呼ばれる。採用時の試験区分によって選抜された幹部候補グループ(「キャリア」と呼ばれる)は、その他の職員(「ノンキャリア」と呼ばれる)と区別して一律に人事管理が行われ、より早いスピードで昇進、高級官僚の地位をほぼ独占する。しかし、各府省ごとにシステムが若干異なり、府省ごとに違う意味で捉えられることが多いため、統一的な定義はない。どういう人までをキャリアと呼ぶかも、各府省で異なる。国家I種の「行政」「法律」「経済」区分に合格した者(総合職試験に合格した事務官)を指すこともあるが、広義は技官を含めた国家I種合格者全体を指す。ただし、法務省では一部の検察官がキャリアとして扱われたり、都道府県警察を含め多くの職員を有する警察組織は国家II種警察庁採用の警察官について準キャリア(セミキャリア)と呼ぶ場合があるなど、例外もみられる。「制度」とは呼ばれるものの現行のキャリア制度について法的根拠は存在せず、全くの慣行として事実上の運用がなされている。

昇格や給与などの待遇は他の公務員(ノンキャリア)と比べ物にならないほど良いと思われがちだが、明らかな差がつくのは入省して相当の経験を積んでからとなる。キャリアは政策の企画・立案や法令案の作成といった法制担当などの責任の重い職務が割り振られることが多い。定時終業など先ず望めず、退庁時間が非常に遅くなることも少なくない(ただ本省勤務者はノンキャリアも含め、概して退庁時間が遅いのが常態ではある)。ほぼ全員が本省室長クラスまで横並びで昇進し、その後の出世競争から脱落した者は府省の地方支分部局、地方公共団体、外郭団体などの幹部職員として出向したり、民間企業に再就職あるいは政治家に転身する。一部は高級官僚(慣例的に本省局長クラス以上を指す)まで昇進し、一般に同期入省又は後年入省の事務次官が誕生するまでに、同年次のキャリアは定年を待たずに退官する。

日本銀行、あるいは国の機関を前身とする組織(JR各社〈鉄道省→日本国有鉄道〉、NTT〈電気通信省→日本電信電話公社〉、日本郵政〈郵政省→日本郵政公社〉も、特定大学出身者の優遇などといった形でキャリア制度が残存する。特殊法人、地方公務員や戦前からある大企業でも、キャリア制度に類似した採用、昇進のシステムを存続させているところもある。

なお、過度な長時間労働などキャリアの労働環境が非常に劣悪であることが広く知れ渡っていること、給与水準が民間とりわけ外資系のコンサルティング会社や金融機関と比して非常に低いこと、職務の多くが現在の制度上の欠陥の弥縫策・国会議員への説明等に忙殺され政策立案に関与できなくなりつつあること、関与できる天下り先も減少していること等々から、若手キャリアの退職が相次いでいる。またキャリア官僚を最も多く輩出してきた東大法学部においてキャリア官僚志望の学生が激減していること、ひいてはキャリア官僚の質も低下傾向がささやかれるなど、キャリア制度は曲がり角に立っている。

事務次官級[編集]

キャリアの一般的な最高位は、各府省の官僚の最高位となる事務次官である(例外の法務省は後述)。また公正取引委員会と会計検査院は事務総長、警察庁は警察庁長官、金融庁は金融庁長官、消費者庁は消費者庁長官、こども家庭庁はこども家庭庁長官が事務次官と同格の指定職俸給表8号俸の官僚の最高位のポストである。内閣官房では特別職の内閣官房副長官補、内閣広報官及び内閣情報官もいずれも政権中枢の業務を担う事務次官級のポスト(指定職俸給表8号俸相当)である。但し、同じ「庁」のつく官庁でも、消防庁・水産庁・気象庁などの長官(各省の外局の長)は、指定職俸給表6-7号俸であり、事務次官に位置付けられるものの、各省事務次官よりは格下である。

なお従前は、外務省では事務次官任官後に、特別職の認証官である特命全権大使の一部(駐米大使・国連大使)に任官する例外的な運用が続けられてきたが、2001年から2002年頃の外務省機密費流用事件や鈴木宗男事件などの不祥事を受けた改革で、事務次官を名実ともに外務官僚の第一人者として指導力・求心力を強化し、キャリアの最終ポストとすべきとする報告書が提出されて、以後は事務次官がポストの頂点と位置付けられている。これ以後に事務次官経験者が大使職(駐米大使)に就いた例は2例のみに留まる。

大臣政務官級[編集]

内閣官房副長官を補佐する特別職の内閣危機管理監と国家安全保障局長は大臣政務官級であり政権中枢の業務を担っている。官僚と官僚出身者が就任することもある他の大臣政務官級の役職としては、いずれも特別職の認証官である人事官(人事院総裁除く)、検査官(会計検査院長除く)、侍従長がある。

副大臣級[編集]

一般的に、その職務の重要性と権限から各省の事務次官を越えたキャリア官僚の頂点とされるのが内閣官房の内閣官房副長官(事務担当)である。同職は副大臣級で特別職の認証官であり、閣議への陪席も認められ、事務次官等会議を主催している。旧内務省系官庁である警察庁、旧自治省、旧厚生省において事務次官級のポストを務めた者から就任するのが慣例となっている。官僚が就任する他の副大臣級の役職としては、認証官の宮内庁長官、慣例的に閣議への陪席が認められている内閣法制局長官があり、官僚出身者が就くこともあるポストとしては公正取引委員会委員長があり、いずれも特別職である。

国務大臣級[編集]

官僚出身者が就任する例の多い人事院総裁と会計検査院長は、更に格上の国務大臣級であり、特別職の認証官である。

法務省における例外的運用[編集]

例外的に法務省では認証官の検事総長・次長検事・(高等検察庁長たる)検事長の方が事務次官より待遇が格上であり、給与面は検事総長は国務大臣級、東京高等検察庁検事長は副大臣級、次長検事と検事長(東京高検除く)は大臣政務官級と定められている。これは検事が職務上対応するポストが三権の一つの司法を司る裁判所の最高裁判所裁判官や高等裁判所長官であり、対応する裁判官に合わせた待遇とされているからである。



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