ガザ地区
ガザ地区(ガザちく、アラビア語: قطاع غزة, Qitāʾ Ghazzah, キターア・ガッザ、ヘブライ語: רצועת עזה, Retzuat 'Azza)は、パレスチナ国(ガザ政府)の行政区画である。名称は中心都市であるガザに由来し、パレスチナ領域の一部を占めている。
中東に位置し、地中海東岸に沿った長さ約50キロメートル、幅5~8キロメートルの細長い地域に200万人以上が暮らしている。南西はエジプト領シナイ半島、北東はイスラエル領に接しているが、テロ行為防止のためにガザ地区と両国の間にはそれぞれ分離壁や検問所が設けられている。イスラエルとの国境にはエレズ検問所、エジプトとの国境にはラファ検問所、三国国境にはカレム・シャローム検問所(英語版)がある。
ガザ地区を統治するハマース(ハマス)などがイスラエル領に対するロケット弾攻撃を日常的に行っているため、武器庫や軍事施設を標的としたイスラエル国防軍の空爆や砲撃、地上侵攻が行われることがある。分離壁は、一部の有識者によって分離壁が「封鎖」の象徴とみなされていることから、「天井のない監獄」「天井のない牢獄」(英語: open-air prison)」とも呼ばれる。
概要[編集]
イスラエルを挟んで内陸に存在するヨルダン川西岸地区とともにパレスチナ国(パレスチナ自治政府)を構成するが、政治的には分裂しており、ガザ地区は武装イスラム主義組織でイスラム過激派のハマース(ハマス)による実効支配下にある。イスラーム聖戦など他の反イスラエル武装組織も活動している。
人口が急増しており、日本の東京都区部(人口およそ1千万人)の約6割の面積に相当する約360 km2ほどの地域に暮らす住民は2016年10月、200万人を超えた。その8割が食料などの援助に依存し、失業率は50%近いとされる。国連人口基金の予測によると、2020年にガザ地区は東京都区部の半分程度の人口密度でありまだ余裕があるが、この先2030年の人口は310万人に達する見通しである。
現在ガザ地区に住む人々の3分の2は1948年の第一次中東戦争によって発生したパレスチナ難民およびその子孫である。この難民問題の解決策は同地を実効支配するハマスに委ねられているが、現在も解決の兆しはない。上記のような人口急増に、ハマスの度重なるテロ行為、それによるイスラエルやエジプトとの貿易制限により、民生は極めて劣悪な状況にある。
- 乳児死亡率:1000人の子供の誕生に対して21.3人の死亡。
- 出生率:女性1人当たり4.7人。
- 人口増加率:2.8%。
- 火力発電所の燃料不足により、2017年時点で電力供給は1日4時間程度。生活だけでなく医療に支障が出ているほか、下水処理場の停止でガザ沿岸は遊泳禁止レベルに汚染されていた。
- 地下水の塩水化や下水処理施設の機能不全で、ガザで供給される水の95%が汚染されており、病気の3割は水が原因だとされる(日本国際民間協力会による)。
上記のうち、下水処理施設は元々3か所あったが老朽化し、イスラエルはハマスによるテロ利用を警戒して下水処理施設の補修に使う建材の搬入に慎重だった。2010年代以降、未処理の排水やゴミが流れ込むことによる海洋汚染が深刻化してイスラエルの海岸にも及び、イスラエルとパレスチナ、ヨルダンに事務所を置く環境NGO「エコピース・ミドルイースト」の働きかけによる資金援助で下水処理が再開されて遊泳可能になった。