ウォルマート
ウォルマート(英: Walmart Inc.)は、アメリカ合衆国アーカンソー州に本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上額で世界最大の企業である。ウォルトン一族による同族経営企業(ファミリー・ビジネス)として知られており、2019年に発表された「グローバル・ファミリー企業500社ランキング」によれば、ウォルマートは世界の同族経営会社の中で世界一の規模であると評価されている。
創業者サム・ウォルトンが、1962年7月2日に最初のウォルマート・ディスカウント・シティーを、アーカンソー州ロジャーズに開いた。その後様々なフォーマットを展開している。EDLPを掲げ、低価格、物流管理、コスト削減などを推し進め急速に成長し、世界最大の売上げを誇る企業となった。現在、世界15か国に進出して事業展開している。
沿革[編集]
ウォルマートは、サム・ウォルトンが1945年にアーカンソー州ニューポートにベン・フランクリン雑貨店を開いたことに始まる。1946年、弟のジェームズ・L・ウォルトンが、ミズーリ州バーセイルズに同様の店を開いた。サム・ウォルトンは、1950年に当時人口1万人にも満たなかったアーカンソー州ベントンビルでウォルトンズ5&10を開業した。1962年まで創業者の事業は雑貨店の経営に限られていたが、同年7月2日、ディスカウントストアである最初のウォルマート・ディスカウント・シティを、アーカンソー州ロジャーズに開いた。
- 1962年 - ウォルマートストア第1号店がオープン。
- 1969年 - ウォルマート・ストアーズ・インク(Wal-Mart Stores, Inc.)として10月31日登記。
- 1970年 - 初の流通センターをオープン、本部をアーカンソー州ベントンビル) に移転。
- 1972年 - ニューヨーク証券取引所に上場。
- 1975年 - サム・ウォルトンが"Wal-Mart Cheer"を従業員に提示。
- 1983年 - サムズ・クラブ第1号店をオクラホマ州ミッドウェスト・シティ(Midwest City)にオープン。
- 1987年 - (内部専用として)全米最大の独自の衛星通信システムを完成。
- 1988年 - スーパーセンター第1号店がミズーリ州ワシントンにオープン。
- 1990年 - 全米最大の小売店になる。
- 1991年 - メキシコシティに海外店舗第1号店をオープン。
- 1992年 - サム・ウォルトン、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領から自由勲章(アメリカでの文民最高勲章)を受章、その後4月に死去。
- 1992年 - プエルトリコに進出。
- 1993年 - 1週あたりの売上高10億ドルを突破(12月)。
- 1994年 - カナダのウールコ(Woolco、122店舗)を買収。
- 1995年 - アルゼンチンで3店舗、ブラジルで5店舗開店。
- 1996年 - 中華人民共和国に合弁事業として進出。
- 1997年 - 従業員数が全米最大となる。世界全体での従業員数は68万人。ダウ工業株30種平均にウールワースと入れ替えにより組み入れられる。
- 1997年 - 年間売上高1000億ドル突破。
- 1998年 - ネイバーフッドストア第1号店をアーカンソーにオープン。ジョイントベンチャーとして韓国に進出。寄付額が年間1億ドルを超える。
- 1999年 - 従業員数が世界最大の114万人になる。イギリスのASDAグループ(229店舗)を取得。
- 2001年 - 感謝祭の翌々日に、1日当たりの売上額12億5000万ドルを記録。
- 2002年 - 中国のウォルマートでは、「現地購入(local buying)」として12億ドル相当の中華人民共和国製製品を購入し、売り上げの95%が中華人民共和国製となる。
- 2003年 - アメリカでオンラインDVDレンタルに進出。
- 2003年 - プエルトリコのアミゴ・スーパーマーケット(Amigo Supermarket)を1700万ドルで買収。
- 2004年 - メキシコのテオティワカン遺跡から2.5キロメートルの地点にスーパーストアを開店。遺跡から近いために現地住民との摩擦が起きる。
- 2005年 - 西友を子会社化する。
- 2006年 - ダイエーが産業再生機構入りしたのをきっかけに、支援企業として名乗りを上げたが落選した。また米最大のスーパーマーケット事業グループCARHCO社(Central American Retail Holding)を子会社化する。
- 2006年 - 5月、韓国からの撤退を発表。韓国内16店舗は同年9月新世界百貨店グループに売却された。
- 2006年 - 7月28日、ドイツからの撤退を発表。ドイツ国内85店舗はメトロに売却される。
- 2008年 - 新ロゴを導入。アメリカ国内では、チェーン名としてハイフンのない「Walmart」を使用開始。また、青果を扱うチェーン「マーケットサイド(Marketside)」を開始。
- 2018年 - 楽天と新たな提携関係を結んだ。
- 2021年 - 西友株式の85%を売却し、うち65%をコールバーグ・クラビス・ロバーツが保有し、20%を楽天が新規設立する子会社がそれぞれ取得する。ウォルマートも引き続き15%の株式を保有。同日付で大久保恒夫がCEOに就任。ウォルマート・ジャパン・ホールディングス株式会社が株式会社西友ホールディングスに商号変更した。
- 2024年 - テレビメーカーのVIZIOを23億ドル(日本円で約3450億円)で買収することを発表した。
店舗数[編集]
アメリカ[編集]
店舗形態別の出店数(2015年7月末。含プエルトリコ)
- ウォルマート・スーパーセンター(SUC) - 3,438
- ウォルマート・ディスカウントストア(GMS) - 459
- ウォルマート・ネイバーフッド・マーケット(主に食品スーパー) - 650
- スモール・フォーマット店舗 - 41
- サムズ・クラブ(会員制小売店)- 651
スモール・フォーマット店舗とは、コンビニエンスストアのほか、企業や大学構内の売店などといった、ネイバーフッドマーケットよりも小規模の小売店舗をいう。北米及び中南米では、Amigo, Supermercado de Walmart, Walmart Express, Walmart on Campus, Super Ahorros のブランドで展開しており、売場床面積は平均で1,100平方メートル程度である(ネイバーフッド・マーケットの標準店舗の3分の1程度の広さ)。
Walmart Express の一部店舗については、2014年からウォルマート・ネイバーフッド・マーケットに店名を変更している。また、既存のウォルマート店舗(主にネイバーフッド・マーケットに相当する規模のもの。売り場面積3,900平方メートル程度。)で、スペイン語話者が多い地域の店舗は、2009年以降、Supermercado de Walmart に店舗名を変更したものがある。
影響力[編集]
家電の規格[編集]
販売形態こそ違うが、日本における家電量販店的な役割も果たしているため、家電メーカーがシェア争いを繰り広げる場としても注目を浴びる。例えば、2007年のクリスマス商戦では、次世代光ディスクの規格競争を繰り広げていた東芝は、HD DVDプレイヤーを(採算度外視の)99ドルの価格で投入し話題となった。これはアメリカ国内のDVDソフトの4割近くがウォルマートで販売されている背景があり、安価なハードによりソフト業界の囲い込みを行うという発想から実現したものである。また2008年2月にはHD DVDに対して優勢となっていたライバル規格Blu-ray Discの支持を表明、直後に東芝をHD DVD撤退に追い込んだ大きな要因の一つとなった。ウォルマートの産業界への影響力を印象づける結果となった。
音楽[編集]
コンパクトディスクの販売でも米国最大手である。アーティストによっては作品をウォルマート独占販売にすることがあり、2007年にはイーグルスのアルバム『ロング・ロード・アウト・オブ・エデン』が自身のウェブサイトとウォルマートだけで発売され大ヒットした。なおダウンロード販売を含めると2008年4月にAppleのiTunes Storeが全米1位となっている。
銃[編集]
全米で最大の銃販売業者でもある。ウォルマート創業者のサム・ウォルトン自身が銃愛好家であり、銃器メーカーのレミントン・アームズ社はサム・ウォルトンの名にちなんだ猟銃の商品名を採用した経緯もある。
2018年2月28日、ウォルマートは火器販売ポリシーを変更し、銃を購入できる最低年齢を21歳に引き上げる方針を打ち出した。同月14日には、フロリダ州の高校で銃の乱射事件(マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件)があり、銃規制強化を求める声が強まっている中の措置となった。
2019年7月には、ミシシッピ州の店舗で従業員が同僚2人を射殺。翌8月には、テキサス州の店舗内でエルパソ銃乱射事件が発生。ウォルマート側も被害者ではあったが、銃を販売する企業であったため批判を受けることとなった。同年9月3日、ウォルマートは、アメリカ国内の全店舗で拳銃や殺傷力の高い軍用ライフル銃の弾薬の販売を停止すること。また、店内で銃を見えるような形で持ち込まないよう客に求めることを発表。こうした決定について全米ライフル協会は、ウォルマートは銃反対のエリートたちに屈服したとして非難した。
創業家[編集]
創業者サム・ウォルトンの親族であるクリスティ・ウォルトン、ジム・ウォルトン、S・ロブソン・ウォルトン、アリス・ウォルトン、ヘレン・ウォルトンの5名は、フォーブス発表による世界長者番付(2006年度)の17-21位を占めており、一族の総資産は8兆円に及ぶ。これは一位のビル・ゲイツ(総資産5兆9000億)を超える。