やなせたかし
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やなせ たかし(本名:柳瀬 嵩〈読みは同じ〉、1919年〈大正8年〉2月6日 - 2013年〈平成25年〉10月13日)は、日本の漫画家・絵本作家・詩人。有限会社やなせスタジオ社長。高知県出身(詳細は後述)。作曲家としてのペンネームは「ミッシェル・カマ」。
『アンパンマン』の生みの親として知られる。社団法人日本漫画家協会代表理事理事長(2000年5月 - 2012年6月)、社団法人日本漫画家協会代表理事会長(2012年6月 - 2013年10月)を歴任。
絵本作家・詩人としての活動が本格化する前までは頼まれた仕事はなんでもこなしたといい、編集者・舞台美術家・演出家・司会者・コピーライター・作詞家・シナリオライターなど様々な活動を行っていた。
受賞・受章など[編集]
- 1967年 週刊朝日漫画賞受賞(「ボオ氏」)
- 1969年 毎日映画コンクール大藤信郎賞(「やさしいライオン」)
- 1970年 毎日映画賞、厚生大臣賞、最優秀動画章受賞(「やさしいライオン」)
- 1989年 第19回日本童謡賞特別賞受賞
- 1990年 第19回日本漫画家協会賞大賞受賞(「アンパンマン」)
- 1990年 サンリオ美術賞受賞
- 1991年 勲四等瑞宝章受章
- 1994年 高知県香美郡香北町名誉町民
- 1995年 日本漫画家協会文部大臣賞受賞
- 2000年 日本童謡協会功労賞受賞
- 2000年 日本児童文芸家協会児童文化功労賞受賞
- 2001年 第31回日本童謡賞受賞(詩集「希望の歌」)
- 2002年 高知県特別県勢功労者
- 2003年 第50回交通文化賞国土交通大臣表彰
- 2004年 新宿区名誉区民
- 2008年 東京国際アニメフェア2008 第4回功労賞
- 2011年 高知県名誉県民
エピソード[編集]
- やなせの没後、重版未定や絶版だった過去作が復刊され流通しているが、生前のやなせは執筆時の制作環境や画力の問題から過去作の復刊には否定的であった。また、やなせスタジオを構えた後は年々遅筆となっていったが、省力化の為にアンパンマンの顔をコンパスで描いていた時代もあった。
- 依頼されて描き下ろしたキャラクターは既存の物に手足をつけた様な手抜きともいえるキャラクターが多く、同郷の西原理恵子に漫画内でネタにされる事も少なくなかった。やなせによるとどのキャラクターも完成には2時間を要しているというが、アンパンマンのキャラクターを2000以上もギネス申請したにもかかわらず、完成度を酷評され却下されたキャラクターが300以上に登った経験をして以降は、独自性の強いキャラクターを手がける様になった。
- 自作のアニメ化作品には積極的に関わり続けた。やなせの関与についてアニメスタッフからは好意的な意見が散見されていたが、毎週通っていた東京現像所の技師から『大抵の漫画家は3週で来なくなるんですよね』と陰口を叩かれ煙たがられていたという。
- やなせの出身地の高知放送では、スポンサーが付かないことを理由に全国ネット後もなお『それいけ!アンパンマン』が放映されていなかった。このため、やなせ自らがスポンサーになって、高知放送での同番組の放映を開始させた。
- 死去の翌日、東京新聞2013年10月16日付の追悼記事で「ダンディーで信仰あついクリスチャンだった」と報じられていたが、後の東京新聞2013年11月20日付で「やなせたかしさんをクリスチャンとしたのは誤りでした」との訂正記事が出ている。やなせ本人は58歳時に1976年3月刊行の『月刊面白半分57号 特集宗教なんかいらない!』にて「ぼくには宗教心というのは全くないのです。おそらくこれからも宗教に頼ることはないでしょう。」「宗教を認めながら、神を崇拝しながら、宗教心がないのです。」と語っている。
- 私生活においては1993年(平成5年)11月22日、妻の暢が75歳で死去している。暢夫人との間に子供はいなく、アンパンマンを2人の子供であるとしている。
- 絵柄はエルジェの影響を受けている。
- 漫画家のレイモン・ペイネを心の師匠とエッセイで語っており、ペイネ美術館の開館時にはイラストとコメントを寄せている。
- 日本漫画家協会が2000年ごろから入居している新宿区の「YANASE兎ビル」は、やなせが所有していたビルだが生前は協会から賃貸料を受け取っていなかった。2015年時点ではビル付近の土地と建物は協会に寄贈されている。
主な作品[編集]
漫画[編集]
- ビールの王さま
- ニッポンビール(現:サッポロホールディングス)の広告漫画。
- リトル・ボオ
- 髙島屋の通販カタログに連載されていた1ページ漫画。リトル・ボオという帽子を目深に被ったキャラクターが、悪者からドタくんとバタコさんを救うストーリー。また、ここに登場するバタコさんは、『アンパンマン』に登場するバタコさんと瓜二つだが、名前の由来が異なっている。『アンパンマン』に登場する「バタコさん」がバターが由来であるのに対し、こちらは「ドタバタ」が由来となっている。
- ボオ氏
- 以上2作品は「Mr.ボォ」とは関係ない。
- キャラ子さん
- 『婦人生活』(婦人生活社)に1952年から連載。
- 内野ムス子さん
- 『中学コース』(学習研究社)に1955年から連載。
- ナマ子さん
- 『中学コース』(学習研究社)に1956年から連載。
- アン子ちゃん
- 『3年の学習』(学習研究社)に1956年から連載。
- スピード仙人
- 『モーターファン』(三栄書房)に1956年から連載。
- おれは孫悟空
- 『面白倶楽部』(光文社)に連載。
- 珍犬ミミ
- 『サングラフ』(サン出版社)に1958年から連載。
童話・絵本[編集]
※太字はアニメ化された作品を指す。
- 十二の真珠
- アンパンマンシリーズ(1969年、PHP研究所)
- おむすびまん
- ニャニがニャンだー ニャンダーかめん(ピョンピョンおたすけかめん)(1996年、講談社)
- アリスのさくらんぼ(1973年)
- やさしいライオン(1975年、フレーベル館)
- 元はボニージャックスによるラジオミュージカルとして制作したものを絵本化(最初の絵本は1969年に刊行された)。その後、上記の通り虫プロダクションで1970年にアニメ映画化もされた。
- ルルン=ナンダーのほし(1976年、講談社)
- チリンのすず(1978年、フレーベル館)
- 1978年3月にサンリオによりアニメ化されて日本ヘラルド映画配給で劇場公開された。
- 絵本自体は『十二の真珠』に収録された短編童話『チリンの鈴』を底本としているが、一部内容が異なる。
- ちいさなジャンボ
- バラの花とジョー
- ガンバリルおじさんとホオちゃん
- ライオンららら(挿絵担当、立原えりか 小学館)
- ハルのふえ(2009年、小学館)
- トムス・エンタテインメントにより2012年12月アニメ化、オムニバスアニメ映画『やなせたかしシアター』の中の1作品として公開。(同時公開・アンパンマンが生まれた日、2008年に製作されたオリジナルビデオアニメ作品『やなせたかしメルヘン劇場 ロボくんとことり』)
- は、は、は、歯のおはなし 歯科詩集(2013年、かまくら春秋社)
キャラクターデザイン[編集]
- 『千夜一夜物語』(日本ヘラルド映画、虫プロダクション製作、1969年6月)のキャラクターデザイン。
- 高知県を走る土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線各駅のキャラクター、および同鉄道中村線・宿毛線のイメージキャラクター。
- てれすけくん(とちぎテレビイメージキャラクター)
- ニックとアン(中華まんをモチーフとした中村屋のイメージキャラクター。中村屋のファンだったため引き受けたという)
- オウくん(母校である高知県立高知追手前高等学校のキャラクター)
- ザ・セサミブラザーズ(岐阜県不破郡関ケ原町にある企業「真誠」と、それに関連するゴマの博物館「胡麻の郷」のマスコットキャラクター)
- TBS「明石家さんちゃんねる」オープニングアニメとキャラクターデザイン
- 人KENまもる君・人KENあゆみちゃん(法務省人権擁護局の人権イメージキャラクター。イメージソングの作詞・作曲も手がけている)
- 日本酪農乳業協会「3-A-Day」キャンペーンキャラクター
- 新宿シンちゃん(新宿区の防犯マスコットキャラクター)
- ミレーちゃん(ミレービスケットのマスコットキャラクター)
- パトロウ(四国新聞が制定した香川県の防犯マスコットキャラクター)
- ピカピカ・アオちゃん・モリくん(青森米イメージキャラクター)
- きずなちゃん(日本さい帯血バンクネットワークシンボルキャラクター)
- 浦和うなこちゃん(さいたま市観光大使。浦和うなぎまつりマスコットキャラクター)
- 佐世保バーガーボーイ(長崎県佐世保市の名物佐世保バーガーのイメージキャラクター)
- うながっぱ(多治見市が2007年8月16日に観測史上日本最高気温を観測した記念に作られた多治見市マスコットキャラクター)
- ちよちゃん、さくちゃん、けんちゃん、うっかりちゃん(文化庁・公益社団法人著作権情報センターの著作権制度100周年記念キャラクター)
- ずんだ&もちこ(仙台市の名物ずんだ餅のキャラクター)
- タチバナ・タッキー(学校法人高知学園キャラクター。高知学園の名誉理事でもあるやなせが学園のためにデザインした)
- なべラーマンと、かわうそのカウちゃん(高知県須崎市の新名物「鍋焼きラーメン」イメージキャラクター)
- コメパンマン(新潟県の米粉・米粉製品PRキャラクター)
- シャチオくん・シャチコちゃん・ほこちゃん(生活協同組合コープあいちのマスコットキャラクター)
- パレオ、パーラ、エビーノ、トマトーナ、マスケラーナ、アンティコ姫。(静岡県浜松市の浜名湖パルパルのマスコットキャラクター)
- 地ぱんマン(福島市本社の「銀嶺食品」マスコットキャラクター)
- ちりめんドンちゃん(安芸「釜あげちりめん丼」楽会キャラクター)
- 麒麟「ジラフ」(同DVDジャケットのキャラクターデザイン。麒麟の2人がDVDを作る際、ジャケットに自分たちのデザインを描いて貰いたいと考え、様々な漫画家やプロダクションに直接電話を掛けてオファーをした所、やなせのみ前向きに快諾してくれた事がきっかけで実現した)
作詞[編集]
- 手のひらを太陽に(作曲:いずみたく、日本の歌百選)
- 星の炎に(作曲:いずみたく) - テレビアニメ『宇宙エース』主題歌
- クラブ君の冒険(作曲:橋場清) - ピー・プロダクション制作の同名パイロットフィルムの主題歌
- 勇気のうた(作曲:藤家虹二)
- おかあさんの顔(作曲:藤家虹二)
- ラッパと少年(作曲:寺島尚彦)
- しっぽはぐぐんと(作曲:山下毅雄/歌:大山のぶ代/台詞:雨森雅司) - テレビアニメ『のらくろ』オープニングテーマ
- アイアイ・ミコちゃん(作曲:山下毅雄/歌:天地総子/台詞:大山のぶ代、松尾佳子) - テレビアニメ『のらくろ』エンディングテーマ
- 美しの丘(作曲・編曲:横山菁児/歌:島崎由理) - テレビアニメ『昆虫物語 新みなしごハッチ』エンディングテーマ
- ムシのついた女(作曲:飯吉馨/歌:ボーカル・ショップ)
- しあわせよカタツムリにのって(作曲:信長貴富)
- 天使のパンツ(作曲者:天井正、編曲者:小森昭宏)
- 夕やけに拍手(第42回NHK全国学校音楽コンクール小学校の部課題曲)
- 花と草と風と(作曲:蒔田尚昊)(第52回NHK全国学校音楽コンクール小学校の部課題曲)
- 海と涙と私と(作曲:木下牧子、泉周二)
- ひばり(作曲:木下牧子)
- ユレル(作曲:木下牧子、泉周二)
- きんいろの太陽がもえる朝に(作曲:木下牧子、泉周二)
- ロマンチストの豚(作曲:木下牧子、泉周二)
- さびしいカシの木(作曲:木下牧子、泉周二)
- 新宿区立新宿養護学校 校歌「ひまわりの歌」(作曲:山崎唯)
- 誰かがちいさなベルをおす
- しろいうま(作曲・編曲:タテタカコ)
- うなぎ小唄(作曲:ミッシェル・カマ)
- 星の木の下で(作曲:ミッシェル・カマ、編曲:タテタカコ)
- ナマコの行進曲(マーチ)(作曲:いずみたく)
- 東京都世田谷区立松丘幼稚園 園歌「ぼくらのうた」(作曲:いずみたく)
- ばら色のクジラ(混声3部合唱曲)(作曲:平吉 毅州)
- ぼくらは仲間(作曲:鈴木憲夫)(第78回NHK全国学校音楽コンクール小学校の部課題曲)
- 美良布保育園の歌(作曲:ミッシェル・カマ/歌:岡崎裕美、竹田えり、山野さと子 - ビューティー3名義)(香美市保育園保護者会連合会)- やなせの地域に対する認識の齟齬のためお蔵入りの様になっていたが、歌を知る保護者たちからの声を受け、歌詞の地名を変えたうえで2015年11月15日に初披露されることとなった。
- 光る海の城(作曲:いずみたく)
- ザザザーン・ポートピア(作曲:いずみたく)
それいけ!アンパンマン[編集]
それいけ!アンパンマン関連の楽曲は、そのほとんどをやなせが作詞を手がけている。
- アンパンマンのマーチ
- 勇気りんりん
- 勇気の花がひらくとき
- 生きてるパンをつくろう
- 勇気のルンダ
- いくぞ!ばいきんまん
- アンパンマンたいそう
- すすめ!アンパンマン号
- サンサンたいそう
- ドレミファアンパンマン
他
CD(本人歌唱)[編集]
- いいなぁアキ(安芸)(2003年11月21日発売。ごめん・なはり線記念ソング。歌:やなせたかし、大和田りつこ、岡崎裕美)[1]
- ノスタル爺さん(2003年12月26日発売)
自伝・エッセイなど[編集]
- アンパンマンの遺書(1995年、岩波書店)
- 人間なんておかしいね 人生の言葉(こころ)(1996年、勁文社 / 2002年、たちばな出版より再版)
- 痛快!第二の青春 アンパンマンとぼく(2003年、講談社)
- 人生なんて夢だけど(2005年、フレーベル館)ISBN 457703008X
- 人生いつしかたそがれてわずかに残るうすあかり(2007年9月、白泉社)
- 絶望の隣は希望です!(2011年9月、小学館)
- オイドル絵っせい 人生、90歳からおもしろい!(2012年、新潮社)※高知新聞の夕刊でも連載
- わたしが正義について語るなら(2013年11月6日、ポプラ社)
- ぼくは戦争は大きらい(2013年12月16日、小学館)
その他(初期作品など)[編集]
- 中学生の友(小学館)挿画(1951年〜)
- 女学生の友(小学館)挿画
- 受驗と學生(研究社)挿画(1952年〜1953年)
- 読切倶楽部(三世社)連載「その日暮しの手帳」(1953年〜)
- 小学五年生(小学館)挿画
- 中学コース(学習研究社)挿画(1953年〜)
- 週刊東京(東京新聞社)連載「時局漫評」「素顔拝見」
- 小説倶楽部(桃園書房)連載「東京変人シリーズ」
- 映画芸術(映画芸術社)連載「ぼくのシネ・スケッチブック」(1950年代末〜1960年代)
- モダン夫婦読本(全日本出版社)漫画(1953年)
関連書籍[編集]
やなせ以外の作家が、やなせを題材にして創った作品や雑誌の特集記事など。
- 『やなせたかし メルヘンの魔術師 90年の軌跡』 中村圭子編 「らんぷの本」河出書房新社、2009年3月、ISBN 978-4309727677
- 『ユリイカ 詩と批評 総特集・やなせたかし アンパンマンの心』 2013年8月臨時増刊号、青土社、ISBN 978-4791702589
- 小手鞠るい 『優しいライオン やなせたかし先生からの贈り物』講談社、2015年、ISBN 978-4062197519
- 梯久美子 『勇気の花がひらくとき やなせたかしとアンパンマンの物語』 フレーベル館、2015年、ISBN 978-4-577-04305-9
- 『勇気の花がひらくとき』は2019年2月に、やなせたかし生誕100周年記念事業の一環でアニメ化、BS日テレおよびRKC高知放送で放送された。
- 梯久美子『やなせたかし〜アンパンマンの勇気』光村図書、2021年
『やなせたかし〜アンパンマンの勇気』は2021年の光村図書の教科書の題材になっている。
- 『やなせたかし 「アンパンマン」誕生までの物語』 ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉筑摩書房、2015年11月
出演[編集]
- まんが学校(1964年 - 1966年、NHK総合) - 先生役。知名度は上がったが、漫画は売れないというジレンマに悩んだという。
- 趣味講座 イラスト入門(1984年12月 - 1985年3月、NHK教育)
- ぼくの絵わたしの絵 第54回全国教育美術展から(1995年3月22日 - 24日、NHK教育)
- さわやかインタビュー(1997年4月13日、1998年3月22日、NHK教育)
- 平成日本のよふけ(1999年、フジテレビ系)
- メトロポリス(2001年、東宝映画)※声優として特別出演
- それいけ!アンパンマン(1988年 - 、日本テレビ系) - やなせうさぎ役。声優として特別出演。
- クリスマススペシャル うたおう!おどろう!みんなのクリスマス(2006年)
- 第1000話「ぼく、アンパンマンです!」(2009年)
- 映画 すくえ! ココリンと奇跡の星(2011年、東京テアトル)
- 映画 よみがえれ バナナ島(2012年、東京テアトル)
- スタジオパークからこんにちは(2004年1月28日・2009年10月21日、NHK総合)
- メッセージ.jp(2007年、BSフジ)
- 知るを楽しむ 人生の歩き方 - やなせたかし 正義の味方はカッコ悪い!(2008年10月8日 - 29日、NHK教育)
- 爆笑問題のニッポンの教養(2011年9月1日、NHK総合)
- きょうの料理(2012年4月25日、NHK Eテレ)
- 100年インタビュー(2012年7月16日、NHK BSプレミアム)
- プレミアムドラマ「忘れないで夢を〜漫画家やなせたかしと妻・暢(のぶ)〜」(2013年1月12日、NHK BSプレミアム)