はたらく細胞
『はたらく細胞』(はたらくさいぼう、英語: Cells at Work!)は、清水茜による日本の漫画。『月刊少年シリウス』(講談社)にて、2015年3月号から2021年3月号まで連載された。
清水のデビュー作で、2014年の第27回少年シリウス新人賞にて大賞を受賞した読切『細胞の話』を元とする。2022年5月時点でシリーズ累計部数は930万部を突破している。
とある「人」の体内で年中無休で働いている数十兆個もの細胞(主に免疫系の諸細胞が中心)を擬人化した物語。1、2話完結型のストーリーで、新米の赤血球「AE3803」や白血球「U-1146」などを中心に、群集劇の形で細胞たちの日常を描いている。
メディアミックスとして、原作者監修による複数のスピンオフ漫画が講談社各誌で連載されているほか、2018年からはテレビアニメが制作され、2024年には実写映画版が公開予定。
制作背景[編集]
最初から連載化を目標に創られた作品ではなく、商業とは無関係の読切作品が出版社の編集者の目に留まって連載化したものである。
作者の清水が日本マンガ塾在学中、当時高校生の妹から「細胞について覚えたいので読み切り漫画を1本描いて」と細胞を擬人化したキャラクターのイラストを提示されたのがきっかけと言う。折しも卒業制作のテーマを探していた清水は、このアイディアを基に卒業制作として『細胞の話』を描き、審査にあたった各出版社の編集者からも好評を得て「少年シリウス新人賞」への応募を勧められた。その後、上記のように大賞を受賞し、連載化まで至った。
2018年7月下旬には、連日の猛暑で熱中症が社会問題となっていることを受け、正しい知識を啓発するために編集部が第6話「熱中症」を特別に全ページ無料で公開している。編集部が作者およびアニメの制作委員会に事前に確認を取ったところ、どちらも快諾している。これと同時期にアニメがポカリスエットとコラボレーションして熱中症回の番外編を公開している。
2019年10月下旬からは乾癬パートナーズとコラボして、乾癬パートナーズウェブサイト、honto、および池袋駅構内広告スペースにて「はたらく細胞 乾癬編」が公開された(2020年10月現在はいずれも終了)。この話は単行本第6巻に「特別編」として収録された。
作風[編集]
元々作者本人は医療系に関わりが全くなかったため、細胞などの知識は高校生程度のものしか持っておらず、話を考える際はまず身体の機能を本などで調べ、それを題材に担当編集と打ち合わせしてストーリーの構成を決めている。打ち合わせの際は、話のプロットを1ページ漫画形式にして用意している。このやり方は本作から始めたものであり、言葉だけでは自分の意見をすべて伝えることが難しいと判断したためである。題材の選択はまず登場させる細胞を決めてから、その細胞に相対する菌や病気などを決定する順序を取っている。
登場キャラクターの擬人化は、細胞は人間化、病原体などはモンスター化・怪人化して描かれている。実際の細胞の姿を基に擬人化を行う場合(例として赤血球の帽子は実際の赤血球の形を模している)もあれば、音の響きなどからインスピレーションを得ることもあり、例えばステロイドは名前からアンドロイドを連想したためロボットとなった。なお、赤血球や白血球などは妹が描いたキャラ設定を基にしている。
キャラクターは全て細胞名・細菌名で統一されているため、基本的に個体ごとの固有の名前はない。他の細胞を呼ぶときは細胞名を使うが、同種の細胞間で呼び合うときは二人称を用いるか、白血球の場合は個体識別番号(赤血球にも存在するが作中ではほぼ使われない)、赤血球やキラーT細胞などの場合は先輩・後輩・班長などの肩書を用いる。血小板は互いにニックネームをつけている。
「自分の身体かもしれない」と思って読んでもらうほうが読者も楽しめそうということで、細胞たちの宿主たる人間自身については描かない方針で、年齢や性別を特定し得る病気もなるべく登場させないようにしている。
評価[編集]
- 宝島社『このマンガがすごい!』2016年版で7位にランクインした。
- 2017年にフランスの新聞『ル・モンド』が紹介する「この夏推薦する図書リスト」で13作品のうちの一つに選ばれた。
- 2021年2月16日放送の『林修の今でしょ!講座』内の「現役東大生500人に聞いた勉強になる漫画ランキング」で5位にランクインした。東京大学の医学科の授業でも引き合いに出されることがあり、医療関係者もこの漫画の細胞の描写はとても正確だと認めて絶賛するほどだと紹介された。
- テレビアニメ版への評価も非常に高く、全国の学校で授業に使用されたり、中国の国営放送で14年ぶりにアニメとして放送されるなど、多くの反響を呼んでいる。
登場キャラクター[編集]
劇中では、体内の細胞がもつ様々な機能が職業や技能として表現されており、個々の細胞はその職種に所属する人物として描写されている。同種の細胞でも外見や性格は違い、特に赤血球と好中球には個別の識別番号も存在する。登場キャラクターとして明確に区別されている個体についても個別に記述する。
血球・免疫細胞・一般細胞以外はほとんどが単発登場のゲストキャラクターである。
「声」はテレビアニメ版における担当声優。