トランスジェンダリズム
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トランスジェンダリズム（transgenderism）または性自認至上主義（せいじにんしじょうしゅぎ）とは、自身が認識する性別が出生時に割り当てられた性と一致しない状態を事実として、その生き方を是認した用語である。しかし基本的にトランスジェンダー当事者の間では使われない過去の用語である[1][2]。
もとはトランスジェンダーの権利擁護活動の一環として生まれた用語であるが、トランスジェンダーという用語を嫌ったりその活動家の過激な運動方針に賛同しない多数派に押され当事者たちによって使用されなくなった。その後、主にトランスジェンダーを敵視する人達（トランスフォビア）により使用される用語となった[3][注釈 1]。LGBT関連の監修も行っているGLAADは、トランスジェンダリズムという単語は、反トランスジェンダー活動家によって、トランスジェンダーの人々を非人間的に扱い、危険なイデオロギーのようにみなす際に用いられている言葉なので、使用は避けるべきであると注意を促している[1]。
もともとは1960年代から医学界の一部で用いられていた用語で、トランスセクシュアル（俗に言う性転換者・性転換希望者）やトランスヴェスタイト（女装者や男装者）を内包する言葉だった過去がある[5]。トランスジェンダーを扱う作家で科学者であるLua エラー package.lua 内、80 行目: module 'モジュール:仮リンク/link' not foundは、「トランスジェンダリズム」という用語はトランスジェンダーの人々を指すコミュニティ内の言葉であった歴史があり、トランスジェンダーの活動家のいくつかの本のタイトルとしても用いられたこともあったものの、2020年の前後あたりからトランスジェンダー差別的な人たちが潜在的に危険な政治的イデオロギーと混同させるように故意に悪用するようになったと解説している[6]。
概要[編集]
「トランスジェンダリズム」は構築主義(社会構築主義)の立場である[7]。アメリカ合衆国で1990年代から使われるようになった「トランスジェンダー」という言葉は、性適合手術を希望する人のみを意味する「トランスセクシュアル」という言葉よりもずっと多くの人々を包含する言葉である[8][9][7]。
2014年の調査でトランス女性の中で、性別適合手術を受けたトランスセクシャル女性は約4分の1のみである[8]。
日本では、2003年の性別適合手術など要件を満たした後に特例的に性別変更を認めた「性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律」（特例法）についても批判的な立場を取った[7][誰?]。
No!セルフID 女性の人権と安全を求める会は、2022年11月12日に開催されたパレードである東京トランスマーチ2022（サイト）に絡んでパレードの賛助団体であるフリーター全般労働組合[注釈 2]がそのTwitter公式アカウントで『ターフ[注釈 3]や反売買春フェミを踏みしだいてこれからも我々は生きていく』と投稿したこと[10]や、トランスマーチの参加者が「Fuck the TERF」というプラカードを掲げ行進した行為について、主催団体に対し賛同と連帯のメッセージを送った政党・個人あてに公開質問状を送り[11]、国民民主党と新社会党から回答を得たと主張している。また、No!セルフID 女性の人権と安全を求める会によれば、国民民主党は労組のツイートやプラカードのことは把握しているとして、考えが異なる他者への侮蔑的な表現で批判したことは問題だとした。新社会党はトランスジェンダリズム派によるトランスジェンダリズム反対派への攻撃が激化している現状を知っているものの、まだ立場を表明出来るほど党内の意見は固まっていない党内状況だとしている[12]。
一方で東京トランスマーチ2022の主催団体である東京トランスマーチは、2022年11月13日に「Fuck The TERF」というプラカードについて 、「結論から先に言えば全く問題ありません」との立場を表明している[13]。
批判[編集]
No!セルフID 女性の人権と安全を求める会は、トランスジェンダリズムは性自認又は自己申告された性別でセルフID制（自認ないし自己申告による性別にもとづいて法律や施設運用などがなされる制度）を推進する思想および運動であるとして[14]、また「生物学的性別(sex)で区切られた領域」を、「性自認で区切られた領域」として書き換えようとしていると批判している[14]。
女性スペースを守る会の賛同者であり防波堤役を務める弁護士の滝本太郎は、男性器あるままに女性スペースや女子スポーツ等で女性扱いせよ、男性器あるままに「女性への性別変更を」という性自認至上主義（トランスジェンダリズム）を批判している[15][16][17]。
松浦大悟は、性自認至上主義(トランスジェンダリズム)の最大の問題点として、「性自認への差別」を違法にした地域や国にて、明らかに男性に見える人物が女子トイレ等の女性専用スペースにいる際にも女性を含む周囲の人は何も出来なくなったことにあると指摘している[18]。日本におけるトイレ利用裁判ではそのトランスジェンダーのパス度[注釈 4]は裁判の結果を決める上で考慮の対象になっている[注釈 5]。また松浦によると「性自認への差別」を違法にした地域や国では他者を見た目（パス度の低さ）から「男/女」ではないと疑うこと、指摘すること、ましては通報することは「差別」だとし、そのため相手から「トランス女性である」と主張されたら相手の性自認をそのまま信じるしかなくなっている状況を伝えている[18]。さらに松浦はトランスジェンダリズムを支持や擁護する学者や人物についても、今も未手術トランス女性で女子トイレや女湯など女性専用スペースを利用している者がいるから問題ないとしたり、そもそも「女性専用スペースを利用したいと主張しているトランスジェンダー女性はいない」などの嘘をつくことも批判している。他人から主張された性自認を否定することや疑うことも差別と主張し、主にシス女性の事前の防犯を禁止しようとしているのに、犯罪が発覚した途端にその人はトランスジェンダーではなくなるという無責任も松浦は糾弾している[18]。
一方でトランスジェンダーの弁護士である仲岡しゅんは、トランスジェンダリズムという用語に対し、「トランスへイターらが危機感を煽り、批判する謎の概念」と断じている[20]。
注釈[編集]
- ↑ メディアにおける性的少数者の差別報道の防止を図るアメリカの団体GLAADはこの用法で "being transgender" という用語を用いており、"transgenderism" という用語の使用を避けている[4]
- ↑ キャバクラで働く非正規労働者の労働組合、キャバクラユニオンを傘下に持つ。
- ↑ 「トランス排除的ラディカルフェミニスト」 (TERF)のこと。
- ↑ 第三者目線で自認する性別に見える度合い。裁判において、「私的な時間や職場において社会生活を送るに当たって、行動様式や振る舞い、外見の点を含め、女性/男性として認識される度合い」をいう。
- ↑ 逆にアメリカではトイレ利用の判決において、パス度は考慮されないという[19]。
出典[編集]
- ↑ 1.0 1.1 “GLAAD Media Reference Guide - Transgender Terms”. GLAAD. 2023年3月13日閲覧。
- ↑ “Decoding the language of the anti-trans movement”. Xtra Magazine (2023年3月10日). 2023年3月16日閲覧。
- ↑ . Cambridge University Press & Assessment. (2023). https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/transgenderism エラー: 日付が正しく記入されていません。
- ↑ “GLAAD Media Reference Guide - Transgender People”. GLAAD. 2023年4月2日閲覧。
- ↑ Cristan Williams (2014-05). “Transgender”. Transgender Studies Quarterly 1-2 (1).
- ↑ “History of the Word “Transgenderism””. Julia Serano (2023年3月6日). 2023年3月30日閲覧。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 高橋慎一「性同一性障害医療と身体の在り処」『現代社会学理論研究』第2巻、2008年、 113–127、 doi:10.34327/sstj.2.0_113。
- ↑ 8.0 8.1 Nast, Condé (2014年7月28日). “What Is a Woman?” (英語). The New Yorker. 2023年2月19日閲覧。
- ↑ Jeffreys, Sheila (2012年5月29日). “Let us be free to debate transgenderism without being accused of 'hate speech'” (英語). The Guardian. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISSN 0261-3077 2023年2月19日閲覧。
- ↑ @FZRK (2022年11月12日). "2022年11月12日 16時06分のツイート" (ツイート). Twitterより2023年4月2日閲覧。モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。
- ↑ “東京トランスマーチ2022に賛同と連帯のメッセージを送った政党・個人への公開質問状”. no-self-id.jp (2022年11月15日). 2023年3月5日閲覧。
- ↑ “東京トランスマーチ2022における問題について 国民民主党、新社会党からのご回答（12月10日締め切り）”. no-self-id.jp (2022年12月29日). 2023年3月5日閲覧。
- ↑ “「Fuck The TERF」というプラカードについて - TransgenderJapan” (2022年11月13日). 2023年3月5日閲覧。
- ↑ 14.0 14.1 “トランスジェンダリズム（性自認至上主義）とは”. no-self-id.jp (2021年9月3日). 2023年2月22日閲覧。
- ↑ 矢田幸己 (2023年3月9日). “性自認至上主義に異論も 同性婚法制化、推進派と反対派で隔たり大きく” (日本語). 産経ニュース. 2023年3月20日閲覧。
- ↑ “オウム被害の滝本弁護士はなぜＬＧＢＴ条例に反対か - 産経ニュース”. 産経新聞 (2022年7月5日). 2023年3月20日閲覧。
- ↑ “反論ないのは宗教…危うい性の議論 弁護士・滝本太郎” (日本語). SANKEI DIGITAL. 産経新聞社 (2022年10月25日). 2023年3月20日閲覧。
- ↑ 18.0 18.1 18.2 松浦大悟 2021, pp. 111-113.
- ↑ 石橋達成 (2021年4月26日). “（第2回）トランスジェンダーのパス度に関する裁判例の日米比較考”. Web日本評論. 2023年2月19日閲覧。
- ↑ 仲岡しゅん 2022, pp. 145-146.
参考文献[編集]
- 松浦大悟『LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』秀和システム、2021年9月17日。モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISBN 978-4798065564。
- 仲岡しゅん (2022-03-28). “トランスジェンダー・バッシングを超えて”. 人権問題研究 (大阪市立大学人権問題研究センター) 19: 143 – 169. モジュール:Citation/CS1/styles.cssページに内容がありません。ISSN 2435-1016 2023年4月2日閲覧。.
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